特別展『ボストン美術館 日本美術の至宝』が、4月2日に大阪にやってくる。今は九州国立博物館で行われている。非常に多数の作品を含む展覧会だが、私は、曾我蕭白の作品が見られるのを楽しみにしている。
江戸時代と言えば浮世絵、そして最近では伊藤若冲が特に人気である。私もその一部について注目してきた。
ところが、曾我蕭白は、それらとはまた別の独自の絵画世界を切り開いた。
左の図は、雲龍図で、長年、日本美術の収集で有名なボストン美術館で修復作業が続けられてきたが、今回世界初公開となる。「龍は神獣・霊獣であり、麒麟・鳳凰・霊亀とともに四霊のひとつとして扱われる」と言われる。しかし、蕭白の龍はそのような威厳はなく、とても人間的な表情をしている。画面一杯に広がった龍の顔は、何とも言えない愛嬌とひょうきんさがあり、我々のある感情を表しているように見える。
画は墨絵であるが、独特な深い黒をはじめさまざまな素材からなる黒色が使われていて、その漆黒さが今なお褪せておらず輝いている。
一方で、蕭白の画には、極彩色の画がある。そのひとつが右の雪山童子図(『もっと知りたい曽我蕭白』, p.59)である。雲龍図の黒のように、青・赤が鮮烈である。女性にしか見えない釈迦、外観は恐ろしいが腰を抜かした弱々しい青鬼。何とも奇妙な世界が見える。
江戸時代は、実に多様な芸術家が、自由に創造力を開花させた時代である。このような芸術家達が、後生の近代社会では、技術家として育っていったのかもしれない。
江戸時代は、暗黒の停滞した時代と捉えたマルクス歴史学の説明とは全く異なった世界だった。そして、そのような時代があったから、明治時代に近代化が一気に進むことができたのだろう。
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