また、これまで長い間、戦前の日本と日本企業のアジア経済発展への貢献に対する不当な批判ばかりが先行していたが、具体的な貢献がいかに大きく多様であったを見直す動きも強まっている。
戦前の日本経済と日本企業について詳しく検討するためには、まず、以前のブログでも書いたように、企業史料統合データベースを使うのが最も基礎的な方法である。このデータベースを見れば、日本企業の情報公開がいかに進んでいるか、また、投資家がいかに広範に存在したかもよくわかる。
このデータベース以外の重要なデータベースには、以下の国会図書館デジタル化資料、アジア歴史資料センター、神戸大学附属図書館デジタルアーカイブなどがある。順に説明してみたい。
まず、国会図書館デジタル化資料である。国立国会図書館で収集・集積されているさまざまなデジタル化資料を検索・閲覧できるサービスである。ダウンロードには少し時間がかかるが貴重な資料が完全版で見られる。ひとつ例を示しておきたい。「北支那開発株式会社及関係会社概要. 昭和15年度」である。北支那開発は、中国に進出した国策持株会社(株式の半分は国が持ち、後半分は多くの投資家が所有する)であるが、傘下に多くの子会社を持ち、北部中国の経済発展に貢献した。
次に、アジア歴史資料センターである。アジア歴史資料センターは、インターネットを通じて、国の機関が保管するアジア歴史資料(原資料=オリジナル資料)を、パソコン画面上で提供する電子資料センターであり、国立公文書館において運営されている。国会図書館デジタル化資料よりも多様な資料を公開している。資料のダウンロードができるが、2つの形式とも見やすいとは言えず、改善が期待される。ひとつ例を示しておこう。三菱商事株式会社業務部東亜課が作成した、「中支那に於ける全国商業統制総会に関する件」である。この資料から、1940年代に占領地上海で成立した、日本と中国上海の資本家との広範囲な協力が進んでいたことがよくわかる。この協力は、広く注目されていて、Collaborationと呼ばれている。
これらのデータ・ベースが多くの人に積極的に活用されて、戦前の日本と日本企業の実態に触れて欲しいと思う。
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