論文「制裁で打撃を受けるロシア有力企業とオリガルヒ:先進国に依存するロシア企業とオリガルヒ」をHPに掲載しました。以下は、2回に分けた、その要約です。なお、前の論文「プーチン政権と一体化するロシア国有企業群:ウクライナ侵攻の背景」もあわせて参照していただければ幸いです。2つの論文もあわせてご参照ください。
1 制裁で打撃を受けるロシアの有力企業本論文では、ForbesのGLOBAL 2000 How The World's Biggest Public Companies Endured The Pandemicを利用して、表1を作成し、改めてロシア有力企業の基本的な特徴をまとめ、さらにロシアのウクライナ侵攻に対して先進民主主義諸国からの制裁が、これらの企業群にどのように影響しているかについて見た。
第1に、Forbesの調査におけるロシア企業は、2000社のうちわずかに24社に過ぎない。第2に、産業別に見ると、Oil & Gas Operations(石油・天然ガス事業)や、Materials(素材、製鉄を含む)などに、産業別に大きな偏りが見られる。第3に、売上高基準で作成された諸表を参照すると、掲載されている各年20社に大きな変更は無い。
第4に、本論文で改めて強く指摘する重要な特徴は、ロシア有力企業上位15社のうち13社がロンドン証券市場に上場していることである。これらの企業の発展のためには、モスクワ証券市場だけではなく、ロンドン市場で巨額の資金を幅広く受け入れる必要があった。しかし、侵攻直後に大幅な下落に見舞われ、その後しばらく、ロシア企業の株式は取引が停止された。表1は、各企業の52 week range (Price (USD))を表示した。この価格を見れば、ロシア有力企業の株式が、一時は侵攻の結果として、ほぼすべての企業で0ドル寸前まで下落する、信じがたい暴落であったことがわかる。
第5に、株式公開企業と非公開企業を含め、ロシアの主力企業の多くが国有企業であり、国有企業でない場合も、国有企業の民営化の過程で、特定の経営者や彼らの投資会社が株式の多数を所有している例が多い。
2 ロシアが依存する外資系企業
2節は、ロシアに進出している外資系企業について考察する。Forbesは、「ロシアで最大の外国企業50社—2019年 フォーブスの評価」 と題する調査を発表した。本論文は多くの補足も含まれたジェトロ 翻訳版に基づいて、表2にまとめ紹介したい。
この調査は、金融機関以外の「外国資本比率50%超の企業」を対象にしていて、現地資本と提携する資源開発関連企業などが含まれていないと推測される。
国別では、米国1兆3327億ルーブル、ドイツ1兆1384億ルーブル、フランス9589億ルーブル、日本9053億ルーブルが4大国で、やや金額が少なくなって韓国、英国、スウェーデン、スイス、英国・オランダ、中国と続く。産業別では、自動車が1兆8438億ルーブルと突出して多く、小売り1兆1824億ルーブル、食品8581億ルーブル、たばこ8354億ルーブルが、自動車に続く。以上のようにこの調査に含まれている企業の多くは国民生活に直結するような産業ばかりである。
以上から、ロシアが先進国経済と企業に全般的に依存していることは明らかである。このような条件の下で、先進民主主義国のロシアに対する制裁は、次第にロシア企業と経済全体の成長を止めるだろう。
3節とおわりには次のブログで: