2018年7月10日火曜日

『米国会社四季報』でみるアメリカ企業100社

『米国会社四季報』が東洋経済新報社によって2014年に刊行が開始されて、今年は5年目になる。アメリカにおける情報技術の革新が急速に進み、その恩恵が我が国にも幅広く浸透し、アメリカ企業への関心が強まっている。また、アメリカ企業などへの直接に投資ができる証券会社も増え、有力な投資先としての意義と魅力も増してきている。

『米国会社四季報 2018春夏号』は、「注目企業」101社と「有力・成長企業」538社を掲載しているが、私は論文『米国会社四季報』でみるアメリカ企業100社 論文】(クリックしてください)で、そのうち時価総額順に100社を選び、主要な情報を整理し、その特徴を明らかにした。

本論文で取り上げたアメリカ企業100社は、東洋経済ONLINEがまとめた、2018年4月13日の株式時価総額順による100社である。『米国会社四季報』での株式時価総額は2018年3月13日時点のものである。
論文末の付表1では100社を、本文中の表1では上位30社を一覧にした。掲載した項目は、Symbol、産業、時価総額(10億USドル)、創業年、上場市場、各Indexへの採用、PER、株主(機関投資家、その他一般株主)である。
下の表は、表1および付表1のうち上位10社と、100社の最大値、最小値、平均値である。
(クリックすると表は拡大できます、次の表も同様です)

以下では主な検討結果を簡単に紹介して行きたい。
・しばしば指摘されるように、100社の上位にはFAANG株の企業が並ぶ。F(Facebook)、A(Apple)、A(Amazon)、N(Netflix, 36位)、G(Google, Alphabet)である。
PERの100社平均は42.56である。アメリカ企業の平均が20倍前後と言われているので、100社平均はほぼその2倍となっている。分布をみると、一桁が7社、10台が28社、20台が33社、30台が12社、40台が4社、50台が5社、それ以上が11社もある。
・アメリカ市場での機関投資家の比重は高まっていく傾向にあるが、「有力・成長企業」を除く68社の平均は71.0%を超えている。
・アメリカ企業100社の最大の産業はソフトウエア・サービスで、それに属する企業は12社、株式時価総額は100社合計の20.2%に達する。第2の産業は、医薬・バイオ・ライフサイエンスで、11社からなり、時価総額は100社計の9.4%である。
・これに対して、従来アメリカ企業の中心であった、銀行やエネルギー、自動車などの産業の地位は低下している。アメリカの自動車3社は100社にランクインしていない。

次に、全100社を付表3で、上位30社を表3で一覧にする。取り上げるのは、売上高(2017、2013年度)、希薄化後1株利益(2017、2013年度)、自己資本比率、フリーCF、ROE、研究開発費、100社の最大値、最小値、平均値である。
下の表は、表3および付表3のうち上位10社と、100社の最大値、最小値、平均値である。














売上高増加率(2017年度と2013年度の比較、年率)が最も高いのは、Facebook Incの50.66%である。79億ドルから407億ドルに増加した。希薄化後1株利益の増加率(2017年度と2013年度の比較、年率)では、Starbucks Corp の274.64%が最も高い。絶対額は小さいが、1000万ドルから19.7億ドルへの増加である。
自己資本比率は、100社では32.96%であるが、金融と非金融では大きな差がある。金融の銀行6社と各種金融6社の平均は13.02%である。
「フリーCF」は事業活動によって得たキャッシュから事業を継続するための資金を差し引いたもの」である。フリーCFが100億ドルを超える企業は17社ある。最も多いのはApple Incの388億ドル、Alphabet Incの234億ドルが続く。
ROEは、100社のうちデータが無い34社を除く66社の平均で56.96である。日本企業が改革を通して模索している目標が10なので、上位企業の数値とは言えはるかに高い。
研究開発費が100億ドルを超す企業は6社で、Amazon.com Incの226億ドル、Alphabet Incの166億ドル、Intel Corpの131億ドルが上位3社である。

なお、論文では、アメリカ市場の30ETF(Exchange Traded Funds)の紹介も試みているが、スペースの都合で割愛する。
このように、『米国会社四季報』は、有力なアメリカ企業を詳しく紹介している貴重な文献である。ぜひとも多くの方々が、この書を通じて、アメリカと言う国、アメリカ経済の理解を進め、アメリカへの投資のために活用していただきたい。

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