韓国の文在寅政権による継続的かつ徹底した反日政策に対して、ようやく韓国内の研究者が包括的に批判した著作が刊行された。李榮薫ソウル大学名誉教授らが著した『反日種族主義』(2019年)である。同書には、李榮薫氏とともに、金洛年、金容三、朱益鐘、鄭安基、李宇衍の諸氏が論文を載せている。
『反日種族主義』と李承晩TV
この著作はとても興味深いものの韓国語で書かれているので、日本人の多くは読めない。しかし、李榮薫ら著者達は、その主張が有力メディアが取り上げる機会が少ないので、YouTubeで李承晩TVを開設した。第1回は以下の通りである。日本語字幕も付いているので、とても便利である。
1. 反日種族主義を打破しようシリーズを始めるにあたって
朱益鍾氏はじめ6名の著者、池上彰SP、2020.2.2 (2020.2.3追補) |
李承晩TVは一般向けに作成されているので、残念ながらその主張の詳しい説明はされていない。また、『反日種族主義』に参加する研究者の研究も、日本語や英語に幅広く翻訳されていない。
翻訳済みあるいは日本語で書かれた主なものは、李榮薫『大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ』(日本語訳、2009年)、金洛年『日本帝国主義下の朝鮮経済』(日本語版、2002年)、朱益鍾『大軍の斥候 韓国経済発展の起源』(日本語訳、2011年)ぐらいである。優れた研究が多いので、今後、日本語訳や英語訳が刊行されることを期待したい。
朱益鍾『大軍の斥候』
これらの中で、私と同じ専門分野を対象にした『大軍の斥候』は、2011年に堀和生監訳・金承美訳で日本経済評論社から刊行された。本ブログでは、2回に分けて同書を紹介したいが、詳しくは「書評 朱益鍾『大軍の斥候 韓国経済発展の起源』(書評:李栄薫編著『反日種族主義』その2)」私のWebsiteの【2019年の論文】で参照してください。
『大軍の斥候』の構成は以下の通りである。
序章、第1章 巨大な新しい波、第2章 孕(よう)胎、第3章 不安な出発、第4章 周辺部において:1920年代、第5章 中心部へ:1930~1937年、第6章 絶頂期へ:1938~1945年、終章
著者の朱益鍾氏の略歴は、日本語版によると以下の通りである。「1960年生まれ、ソウル大学経済学科および同大学院卒業、現在ソウル信用評価情報株式会社信用評価担当取締役理事。経済学博士、専攻は韓国近代経済史、韓国近代産業発達史、企業史。」
この著作の最も重要な特徴は、京城紡織とそれに関連する産業・企業についての具体的な資料が非常に豊富であることである。特に朱氏が企業史研究者であることからわかるように、京城紡織の財務諸表をあらゆる時期について駆使している。また、本文だけではなく、日本語版巻末にも多数の図表が掲載されている。
これらの多数の資料と図表を用いた議論において、朱氏は予断と偏見に基づくイデオロギー的な批判は徹底して避けている。金氏一族や朝鮮人企業家への根拠の曖昧な賛辞や、朝鮮総督府や日本企業への一方的な批判は行わずに、それぞれの資料から得られた結論をそのままわかりやすく述べている。
各章ごとの紹介は、次回ブログの(2)を参照してください。
エッカートについて詳しくは、私の論文「書評 エッカート『日本帝国の申し子』」を、【2020年の論文】でご覧ください。
『反日種族主義』について詳しくは、私の論文「書評:李栄薫編著『反日種族主義』その1
戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判の最近の動向をまとめた『論文・書評集:戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判』は、以下に掲載しています。【新保博彦の日本語版Website TOPページ】
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