NHKが放送した「江戸あばんぎゃるど」は、日本から流出した作品を中心に、江戸時代の優れた絵画などを多数紹介したすばらしい番組である。
その再放送がなかなか実現しなかったが、ようやくNHK4Kで改めて見ることができたので、私が注目した作品を紹介したい。以下3点は、すべて、エイブリー・ブランデージ (Avery Brundage)氏が収集したものである。
長沢芦雪(1754年ー1799年)「那智滝図」(サンフランシスコ・アジア美術館蔵)
長澤蘆雪は「もっと知りたい長澤蘆雪」の表紙ともなっている「竜虎図襖」や「寒山拾得図」でよく知られているので、それとはやや異なる方法で描かれた「那智滝図」を見たときは本当に驚いた。
何よりも、白地のままの滝の水が、激しく流れ落ちる様子を見事に表現している。
滝は当時の日本の画家にとっては重要な題材で、「江戸あばんぎゃるど」(2)で紹介する柴田是真の滝図もあわせて見ていただきたい。なお、「もっと知りたい長澤蘆雪」には、この作品は掲載されていない。
森狙仙(1747年ー1821年)「猿図」。
森狙仙は猿の画を得意とするが、猿の肌の色の柔らかさ、繊細な毛、表情の豊かさに引きつけられる。
森狙仙の動物の画には、第2回に登場する「群獣図」もあるが、同じ目線で動物をとらえている。
番組中で、西欧の動物は解剖図的に描かれているが、日本の画は動物に命を込めて描いたと説明されている。あらゆるものに神が宿るとする考えが根づいている日本と、人間中心の西欧とではそのような違いがあると言えるかもしれない。
なお、森狙仙にはまとまった研究書が無い。
狩野氏信(1616年-1669年)「鶴図屏風」
六曲一双の壮大な屏風。アメリカに渡った作品にはこのタイプがかなりあるようだ。横幅の広さと、折りたたんだ屏風の構造から、描かれた題材の動きがうまく表現できるように思われる。右隻では鶴が飛び立ち、左隻では舞い降りて骨を休めている様子を描いている。
説明している女性と比較して、屏風がどれほど大きいかがわかるが、現代の超特大横長ディスプレイでその動きを眺めているような感じになる。画面でもわかるように、2014年に修復が終わったという。
狩野氏信についてはまとまった研究書が無いが、「源氏物語画帖」などの作品がある。
なお、次回の私のブログでは、「江戸あばんぎゃるど」第2回の作品を中心に紹介したい。
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