図録表紙 |
「本展では、戦後に制作された墨画的表現を概観し、戦後日本画の中での墨画の性格、水墨画の伝統の受容/変容の状況を、さまざまなアプローチを見せた画家たちの群像により紹介します。」というのが展覧会の目的である。
残念ながら私は行けなかったが、すばらしい作品が多いので、購入した図録で紹介したい。この図録は、小さいながら、3枚見開きが高山辰雄、平川敏夫、下保昭、2枚見開きが横山操、小泉淳、加山又造の各氏の作品で掲載されているので、小ささを感じず十分に楽しむことができる。
非常に興味深い墨画が多数集められているが、私が特に強く引かれたのは、平川敏夫氏(1924-2006)の次の作品である。それぞれの画像をクリックして、ぜひ拡大して見ていただきたいと思います。
平川敏夫「雪后閑庭」、1985/1990年 豊橋市美術博物館
図全体 |
左半双 |
右半双 |
静まりかえった池の周辺で、前面に深く積もった雪が強く輝き、背後の木々が幹と枝を大きく広げている。枝に降り積もった雪か、舞っている粉雪が木々を覆っている。
白と黒の2つの色とそのコントラストだけで、これほど豊かな自然の生命力を繊細に描き出すことができるとは、本当に驚きである。
展覧会のもうひとつの作品も紹介しよう。加山又造氏のよく知られた作品である。
平川氏と同じような構想ではあるが、対象はビルが建ち並ぶ大都会の東京。「雪后閑庭」と同じように、辺り一帯に雪が降り積もり静まりかえっている。
加山又造「月光波濤」、1979年
今回の展覧会に展示された作品ではないが、あわせて掲げておきたいのは、加山又造氏のこの代表作である。
上の静まりかえった東京とは対照的に、左半双では高い岩にあたって激しく砕け散る波と水面が、月の光を受けて輝き、右半双にはそれを遠くから眺めるような満月、黒を背景にして白という色のみで、躍動する自然の一瞬が描かれている。
加山氏は、自らの手法を次のように説明している。「和紙に胡粉の上澄みを数度引き、エアガン、バイプレーター噴霧機、染色的手法、数種類の明墨の併用、と、現在自由に出来るあらゆる手法技術をぶち込んでみた。」(NIKKEI POCKET GALLERY「加山又造」、作品33の解説)
本ブログで紹介した展覧会「墨画×革命 戦後日本画の新たな地平」は残念ながらもうすぐ終了だが、図録や関連する墨画で、多くの方が墨画への関心が高められるよう願いたい。
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