2020年2月8日土曜日

カラヴァッジョ 3つのマグダラのマリア

左の図は、現在あべのハルカス美術館で開催されている「カラヴァッジョ展」の最も注目されている作品「法悦のマグダラのマリア(1606年)の部分図である。展覧会の図録p.125から掲載させていただいた。(コピーのため、左に折り目による白い線が入っている)

展覧会の図録は233ページ、縦28cm、横22.5cmで、カラヴァッジョの作品13点と、同時代の個性派画家、カラヴァッジョに影響を受けたカラヴァジェスキの作品30点と、詳しい解説を掲載している。こうして同書は、カラヴァッジョを理解する重要な書籍になっていると思われる。

ところで、多数のカラヴァッジョ研究を発表されている宮下規久朗氏は、『もっと知りたいカラヴァッジョ』(東京美術、2009年、2017年に第6刷)で、この作品について次の様に解説している。「聖女は顔を上げ、法悦のような表情をしているが、これは法悦というより悔悛の場面である。聖女の頬には涙の粒がいくつも光っている。17世紀に、神と人との合ーを示す法悦というテーマが流行するが、それに従ってマグダラのマリアも次第に法悦の姿で表されるようになる。カラヴァッジョの作品はその嚆矢となった。」(p.61)

この作品には多数のコピーが存在し、真贋を巡って論争があるが、以下で少し紹介しておきたい。真贋論争を通じて、カラヴァッジョがめざしていたもの、制作途上での様々な構想や工夫が理解できるのではないだろうか。

まず、展覧会の図録の解説者(TK, 木村太郎)氏は、次のように解説している。「(この展覧会に展示された)本作品(左下の図:新保)は、2014年10月24日付の「ラ・レプッブリカJ紙上のインタビューを通じてM・グレゴーリがカラヴァッジョの真筆として公表し、2016年に東京の国立西洋美術館で開かれた「カラヴァッジョ」展で初公開された作品である(グレゴーリ2016)。」(p.122)

これに対して、宮下氏は『もっと知りたいカラヴァッジョ』でもうひとつの作品を紹介し、次のように述べている。「<マグダラのマリアの法悦>には多数のコピーが現存し、「マッダレーナ・クライン」とよばれる上(右下:新保)の作品は、最も出来のよいものである。しかし、作品の質から判断して、原作ではないかもしれない。」

展覧会図録の解説者木村氏は、「(展覧会の)本作品とクライン作品(右下)の図柄には細部に相違点がある。聖女は後者より前者のほうがわずかに若い・・・前者の画面右下に見える頭蓋骨は、後者では排されている。前者の画面左上に捕かれた、茨の冠をともなう十字架や洞窟の入り口も後者では確認できない。」(p.122)
なお、2つの図の色合いあるいは光の強さなどが異なるのは、2つの作品によるものか、書籍に掲載された時に生じたものかは残念ながらわからない。

なお、展覧会の作品のX線写真(左最下段)と、宮下氏が「原作である可能性が最も高い」(p.61)と紹介した、ロベルト・ロンギが公表した白黒写真の作品も右最下段に掲載した。ロンギの作品はクライン作品と近似していて、展覧会の作品とは構図などでかなり異なっている。

クライン作品
展覧会の作品


ロンギが公表した作品(白黒)
展覧会の作品のX線写真


















さて今後、この作品は現代の科学技術を用いてあらゆる角度から調査され、どれがカラヴァッジョの作品なのか徐々に明らかにされるだろうが、とても興味深い。

次の私のブログでは、カラヴァッジョの他のいくつかの作品を紹介し、彼が後世に与えた影響などを考えて見たい。

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