2020年4月7日火曜日

『青磁 清澄な青の至宝』を味わう

『青磁 清澄な青の至宝 (別冊『炎芸術』)』(阿部出版、2017年) を紹介したい。
コロナウイルスの影響が拡大し、図書館の利用もままならない日が続くが、たまたますばらしい本に出会った。この本の本体価格は2500円と安いとはと言えないが、掲載された作品の多様さ、鮮明で美しい多数の写真、詳しい解説記事などで、とても価値がある1冊だ。
最近は多くの方が、家でゆっくり本を読む機会も増えると思われるが、ぜひ手にとっていただきたい本である。

目次
序章 青磁とは何か
第1章 青磁の巨匠、岡部嶺男 清水卯一 三浦小平二
第2章 青磁の精鋭作家、中島 宏 川瀬 忍 髙垣 篤 福島善三 浦口雅行 若尾 誠 木村展之 若尾 経 伊藤秀人 志賀暁吉
第3章 青磁の注目作家、村田亀水 鈴木三成 原田卓士 峯岸勢晃 渡部秋彦 池西 剛 猪飼祐一 明石 大 津金日人夢 本間友幸 今泉 毅 吉田周平 今井完眞 藤田直樹
第4章 青磁を知る・見る・買う、中国青磁概略史、日本近代青磁概略史、青磁用語集、青磁の名品を所蔵する美術館、青磁マーケットプライス

まず、「”青磁”とは、鉄分を含んだ釉薬が高温の還元炎焼成(攻め焚きして、酸素不足の状態で焼く)によって青みを帯び、素地の土の色を透かして、青や緑にかがやく美しいやきものである。」(同書6、以下数字は掲載ページ数)
なお、「現在、多くの作家が陶土に青磁釉を掛けたものを「青瓷」、磁土に青磁釉を掛けたもの「青磁」と使い分けている」(3)

青瓷壺
以下では、同書のすべての作品を紹介したいほどだが、スペースの都合があるので、陶芸には全くの素人の私が、特別に魅入られた作品をいくつかを、2回に分けて紹介したい。

まず、志賀暁吉さんの「青瓷壺」(2006年)である。志賀さんは、「2007年の第19回日本陶芸展で大賞を受賞した・・・受賞作品の「青瓷壺」は、白味を帯びたマットな青磁軸が優しく光を放ち、豊かなボリュームを醸し出している。縦長の瓶の形状が新鮮で、とても清々しい。」(92)右の作品は、授賞作品に近いものという。

茜青瓷-屹立
私は、この作品とともに、貫入(かんにゅう)が見られない、本当になめらかな表面を持つ「淡青姿面取花生」(93)も、ご覧いただくことをおすすめしたい。

次に、髙垣 篤さんの「茜青瓷-屹立」(2005年)である。
同書解説には、「空を連想させるしっとりとした印象の青磁釉と、その同じ釉薬から生まれた鮮烈なイメージの茜色。その二つの出合いは、高垣篤に過去にはなかったまったく新しい青磁の表現を可能にさせた。」(50)とある。

「茜青瓷-屹立」は、明るい澄み切った色の青磁、屏風のような複雑な構造とともに、作品の稜線を彩る茜色が目を引く。そして、高垣氏の茜色を中心とした、「茜青瓷、<曙>」と題される作品が、本作品の次のページに掲載されている。あわせて見ると、2つの色の対照的な美しさが際立つ。

象牙瓷水指
最後に、若尾 経さんの「象牙瓷水指」(2010年)。
「若尾の青磁の中で唯一、固有の名称が付けられている「象牙瓷」は、淡く黄色味がかった釉色を特徴とするオリジナルな青磁だが、ボディーにスリットのような深い切れ込みが入ったり、釉薬を掛けない部分がある。」(80)

若尾さんには伝統的な青瓷の作品も多いが、「象牙瓷」は図の通り、柔らかい象牙色と、蕾のような、独特な形の作品で、本書中にも類を見ない。

比較的同じような色合いの作品をあえて挙げるとすれば、若尾 誠さんの「月白瓷茶垸」(72)だろう。経さんが若尾利貞さんの長男、誠さんが若尾利貞さんに師事していたからだろうか。

次回は、同書のさらにいくつかのすばらしい作品を紹介したい。

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