「書評 『ドイツ=ロシアの世紀 1900-2022』」を掲載しました。
書評(pdfファイルです。クリックしてご参照ください)
目次:はじめに、最も重要な基本的な評価、書籍の構成、目次について、1 戦間期:1918-45年 (28年間):最終的には独ソ戦争で終わる期間、この時期を主導するヒトラーとスターリン、2 戦後東西ドイツの分断:1949-89年 (41年間)、3 その後1990-2025年 (36年間)、ドイツの再統一、独ロ間の接近、そしてロシアのウクライナ侵攻、おわりに
上記の「最も重要な基本的な評価」は以下の通りです。
第1に、20世紀はパックス・アメリカーナの時代という一般的に受け入れられている評価に対して、全く新しい視点である、ドイツとロシアの世紀という視点は、現代を理解する上できわめて重要である。ドイツとロシアは、20世紀の間、対立と協調を繰り返し、それが世界とヨーロッパに与えた影響は計り知れない。特にロシアのウクライナ侵略が続いている現在、その特徴を強調する意義はとても大きい。
第2に、著者の視点が極めて明解で適切である。以下で示すように、ロシアのウクライナ侵攻に対する厳しい批判、ウクライナへのドイツの支援についての必要性については曖昧さがなく一貫している。いくつかの記述を示しておこう。
「遅くとも二〇二二年二月二四日以降、一九九〇~九一年の転換とそれに託された和解と平和的な二国間・多国間協力への期待は過去の遺物となった。」(下、295)
「必要なのは美辞麗句ではなく、むしろ必要なあらゆる戦争物資をふくめた喫緊の行動を伴う支援であり、それは理想的にはプーチンを軍事的に敗北させるか、少なくとも、最終的にはロシアと対等な立場で受け入れ可能な和平条件を交渉できる立場にウクライナを置くための戦場における支援である。」(下、297)
「この限りにおいて、現在、ドイツ=ロシアの世紀が終わりを迎えていることを示唆するものは多い」(下、302)。ただ、ここで厳密には、「ドイツ=ロシアの協調の歴史が」と言い換えたほうが適切なのではないだろうか。
ところで、ドイツ・ロシアの関係の諸問題は、アジアにおける日本とロシア、中国との関係を考える上でとても参考になる。その意味でも本書を多くの日本人の関心ある人々に薦めたいと思う。