東芝の粉飾決算の解明にあたって、元東京高等検察庁検事長の上田廣一氏を委員長とする第三者委員会の果たした役割は非常に大きかった。
図表はクリックすると拡大できます。以下の図表も同じ |
第三者委員会の調査では、2009年度から2014年度第3四半期(ただし、2009年度の有価証券報告書に記載されている比較対象年度である2008年度を含む)を対象期間とし、工事進行基準案件に係る会計処理を含む4つの課題が調査され た。
その結果、過年度の決算の修正額は1518億円、それに固定資産の減耗を含めて2248億円の税引き前の利益の修正となった。
その後、2015年度の決算が行われ、修正はさらに大きくなった。詳しくは上記論文を参照していただきたい。
この調査報告書を含め8つの第三者委員会の調査報告書に対して、第三者委員会報告書格付け委員会は格付けを公表している。この委員会は、第三者委員会等の調査報告書を「格付け」して公表することにより、調査に規律をもたらし、第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高めることを目的としているという。
以下の表(上記論文に掲載)では、格付け委員会による8つの第三者委員会の調査報告書に対する評価を一覧にし、点数化した。東芝に対する評価は下から2番目に低い。主な理由は、東芝が買収したウェスチングハウスの減損問題に触れなかったこと、監査法人を調査対象にしなかったことが挙げられる。
ところで、東芝よりもさらに大幅に低く最低であったのが、朝日新聞社第三者委員会が公表した報告書である。これは、朝日新聞が、虚偽である吉田証言などをもとに従軍慰安婦について長期にわたって報道し続けた責任と再発防止について調査報告している。この報告については、改めて詳しく検討したい。
この報告書に対して、格付け委員会は、8名の委員のうち、5名が不合格とし、3名は合格最低点のD、C以上の評価は皆無だった。 相対的によりましな評価であるD評価の委員の意見を紹介しておこう。「本報告書については、「組織的要因に対する事実認定と原因分析」という重要な要素が大きく欠落していると言わざるを得ない。」、「事実調査と原因分析の踏み込み不足、また、体制面からの再発防止策の提言不足」、「委員構成の独立性、中立性、専門性(F)」である。D評価であっても、その報告の基本的な内容への批判となっている。
わが国では企業やその他の組織の不祥事に対して、第三者委員会の役割と期待がますます大きくなってきている。それ故に第三者委員会が独立して活動しているかどうか、報告が専門的、包括的に作成されているかどうかを検討することもまたますます重要になってきていることを強調しておきたい。
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