2021年9月25日土曜日

最近の主要な論文をまとめた5つの論文集を作成しました

 私が退職後書き続けた論文をテーマごとにまとめ、5つの論文集を作成しました。私のwebsiteで公開していますが、以下でも簡単にご紹介しますので、ぜひご一読ください。

『論文集 超管理社会をめざす中国と中国企業』(2021年6月11日編集、6部12章)
 この論文集には、今注目の中国企業の分析が多数含まれています。例えば、強力な政府支援で急成長する中国半導体企業5社:先行するSMIC、Huahong Group、急追するYMTC、INNOTRON、JHICC、監視カメラ製造のHikvision、DahuaとHyteraの3社、新興のAI企業:SenseTime、Megvii、CloudWalk、Yituなどです。

 これらの検討を通じて、中国企業の急成長とともに、政府・共産党の支配下で超管理社会をめざす中国企業の実態と、それと対抗するアメリカを中心とする世界の対応を明らかにしようとしました。

『論文集 戦間期日本企業の海外進出2021年6月14日編集) 
 この論文集は、戦間期日本の海外投資、日本企業の海外進出に関連する7論文を掲載しています。中心となるのは、私のJapanese Companies in East Asia: History and Prospects: Expanded and Revised Second Editionの日本語版簡略版である各論文です。 

 日本の海外投資と進出企業の活動は、多くの受け入れ国・地域の企業を生み、それらの企業との競争と協調(Collaboration)を通じて、受け入れ国・地域の市場経済の発展と近代化に貢献しました。

『論文集 分断と内向き時代のグローバル企業2021年6月21日編集)
 1970年代以降、経営資源の移転をもたらす直接投資は急激に拡大し、直接投資は、投資国・企業と投資受入国・企業の両方の発展に著しく貢献しました。しかし今、その特徴のいくつかが大きく変化し、グローバル市場が分断され、各国が内向き志向を強める時代に入りつつあります。

 論文集では、このような環境の下での、世界と中国のファブレス・ファウンドリー、台湾EMSと半導体企業、半導体製造装置産業を牽引するASML、フィンテック企業、世界と日本の製薬・バイオ企業、などの注目すべき企業群を取り上げました。

『論文・書評集 戦間期日米関係: 経済・企業システムの共通性と相互依存2021年6月24日編集)
 戦間期には、日米両国はきわめて近似した経済システム、企業システムを発展させており、同時に両国間経済は相互依存を強めていましいた。そのため、両国には日米関係を維持・発展させようとする政治家、官僚、企業家、軍人も決して少なくありませんでした。

 本論文集では、これまでの両国経済・企業の分析を踏まえて、両国における日米戦争回避をめざす政治家、経済人などの活動に注目します。

『論文・書評集 戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判2021年6月27日編集)
 この論文集第1部 戦間期朝鮮経済史研究の、論文「戦間期朝鮮企業論 - 日朝企業間のCollaboration」は、政府・朝鮮総督府統計だけではなく、日本企業の報告書や『大陸会社年鑑』などを活用し、朝鮮における日本企業と京城紡織をはじめとする朝鮮人企業の活動の実態を明らかにしました。
 これを踏まえて、エッカート、朱益鍾、木村光彦の各氏の著作を、第2部 反日種族主義に関する研究では、李栄薫編著『反日種族主義』と李宇衍論文などを検討しています。

これらの論文集は、すべて以下に掲載しています。新保博彦の日本語版Website TOPページ

New! 新保博彦の政治・経済コラムを開設しました。こちらもよろしくお願いいたします。(2021.10.2)

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2021年9月16日木曜日

『新版画ー進化系UKIYO-Eの美』に出かけました

千葉市美術館所蔵 新版画ー進化系UKIYO-Eの美が、(2021年)9月15日(水)から27日(月)までの日程で、大阪高島屋 7階グランドホールで始まった。特に吉田博の作品に興味があり、ブログでも取り上げているので早速出かけた。

左は、展覧会の図録の表紙、川瀬巴水東京十二ヶ月 谷中の夕映である。川瀬巴水については、機会を改めて取り上げたい。

「新版画は、江戸時代に目覚ましい進化を遂げた浮世絵版画の技と美意識とを継承すべく、大正初年から昭和のはじめにかけて興隆したジャンル」とされる。今回の展覧会は、千葉市美術館が誇る約120点で構成され、小原古邨、伊東深水、川瀬巴水、山村耕花、吉川観方、小早川清、橋口五葉、吉田博、などの多数の作品が展示されている。

展覧会は、プロローグ 新版画誕生の背景、第1章 新版画、始まる、第2章 渡邊版の精華、第3章 渡邊庄三郎以外の版元の仕事、第4章 私家版の世界という構成となっている。

やはり私は、展示の最後に位置する吉田博の作品に注目した。まず、「雲井櫻」である。作品は53.9×70.7cmと大きい。「明治32年に吉田博が初めてアメリカで自作を展示した際、デトロイト美術館に唯一買い上げられた作品が同構図の水彩画であった。」「摺りに際しては版木と紙の収縮率の違いから木と花がずれてしまい、ふたりの摺師を使ってようやく摺りあげたと伝わる。」(展覧会図録からの引用、以下同じ)吉田博作品の、刷りの特別の多さはよく知られているが、作品に近寄って見てみると、桜の花と木のずれは見事に無く、重ね刷りの跡は見つからない。画集などではとてもわからない技術の高さには本当に驚いた。

次に、吉田博を代表する「渓流」である。「《雲井櫻》とともに、吉田博が制作した特大版6点のうちの1点。」この作品もまた、右の画像サイズではとてもわからない、水の表現の驚くべき多彩さとひとつひとつの精緻な動きが、実物からよくわかる。

私の以前のブログでは、「流れ落ちる水と渦巻く水が、信じられないような精細さで描かれている。水の音が聞こえてきそうである。」と書いた。実物を鑑賞して、改めてその感を強くした。

追記:これまで私が作成した吉田博についてのブログは以下の通りです。(2021.10.23)

『吉田博 全木版画集 増補新版』刊行される(2021年10月23日)没後70年 吉田博展(2019-21)、図録の紹介(2020年12月2日)『吉田博 全木版画集』(2017年1月9日)

「豊かに流れる黒髪の圧倒的な存在感や女性の清雅なたたずまいが印象的な、五葉の私家版を代表する1点。」橋口五葉髪梳ける女」である。

やはりこの画像からはわかりにくいが、豊かな黒髪の黒の鮮やかさと、髪の一本一本が見事に丁寧に描かれている。高島屋の展覧会ページでは、この画像よりも大きく掲載しているので、ぜひそちらも参照していただきたい。

橋口五葉のもうひとつの作品が夏衣の女。髪の表現は上と同じだが、こちらでは、夏衣に注目したい。黒の夏衣からは、女性の肌が透けて見える。この画をどのような技法で作成したのだろうか。図録に解説が無いのが大変残念である。

私はこの画を見て、『浮世絵の至宝 ボストン美術館秘蔵 スポルディング・コレクション名作選』にも掲載されている、喜多川歌麿「娘日時計」午ノ刻を思い出した。歌麿の作品は、版画の色が褪せて、その状態がよくわからないものが多いが、このコレクションの画は、確かに「女性が羽織った薄衣から白い肌が透けて見えている。」

最近の画集は大きく鮮明な印刷になっているが、やはり新版画や浮世絵は画集ではなく、現物に近寄って見ることで、その技術の高さが本当に味わえると思う。コロナ禍でなかなか外出がかなわない日々が続くが、混みそうな時間をうまく避けて、ぜひ出かけていただきたい展覧会である。