こうした香港の現状について包括的に明らかにする研究も、ようやく少しずつ増えてきた。遊川和郎『香港 返還20年の相克』は、香港の歴史と現在、経済と政治、現在の民主化運動などの基本的な問題を、多様な資料にもとづきわかりやすく理解することができる最も適切な書籍のひとつである。
この書籍は2017年6月に刊行された。目次は、以下の通りである。
序 章 愛される都市
第1章 香港返還前史
第2章 共存共栄関係の終焉
第3章 形骸化する一国二制度
第4章 累積した経済政策の誤り
第5章 迷走する民主化と軽量化する行政長官
第6章 劣化する国際経済都市
終 章 竜宮城のリニューアル
以下では各章の順序に従って紹介したい。
第2章 共存共栄関係の終焉
第2章では、香港の経済的な発展の要因(41、数字は本書のページ数)とその役割の低下(47)がまとめられている。まず、「2 香港はなぜ発展したのか」では、簡潔に香港の発展要因をまとめている。
「①東アジアの中心という地理的な優位性(ハブとしての立地、アジアの主要都市に4時間以内でアクセス可能)、②喫水が12-27メートルという天然の良港という2つの所与の条件に、③レッセフェール(自由放任)と英国流の統治、④現地の人達の「もっと稼ぎたい」という旺盛な経済意欲、⑤さらに1980年代以降は中国の改革開放によって隣接する広東省と一体化しながら発展を加速させ、植民地にもかかわらず目覚ましい発展を遂げたと言える。」(41)
第3章 形骸化する一国二制度
このような香港における中国経済と企業の役割の増大は、当然のこととして中国からの政治的な支配の強化をもたらそうという動きを強める。
「本来「伝家の宝万」であるべき中国による司法解釈は都合よく行われるようになり、2016年までに5回行われた。」
「①東アジアの中心という地理的な優位性(ハブとしての立地、アジアの主要都市に4時間以内でアクセス可能)、②喫水が12-27メートルという天然の良港という2つの所与の条件に、③レッセフェール(自由放任)と英国流の統治、④現地の人達の「もっと稼ぎたい」という旺盛な経済意欲、⑤さらに1980年代以降は中国の改革開放によって隣接する広東省と一体化しながら発展を加速させ、植民地にもかかわらず目覚ましい発展を遂げたと言える。」(41)
しかし、強力な国家政策で改革開放を進める中国の発展の過程で、「中国の成長に伴う香港の役割低下」(47)が始まった。「香港のGDPの対中国比は1994年をピーク(香港が中国の24.2%)に低下し始め、2000年には中国の14.3%、2010年にはわずか3.8%、2015年2.9%と見る見るうちに小さくなった。」(47)
このような香港における中国経済と企業の役割の増大は、当然のこととして中国からの政治的な支配の強化をもたらそうという動きを強める。
「本来「伝家の宝万」であるべき中国による司法解釈は都合よく行われるようになり、2016年までに5回行われた。」
そして、最も重要な5回目が2016年11月の立法会で議員が行った故意の宣警の有効性、議員資格についてであった。最初の立法会選挙で選管に出馬を阻まれた1人は、本土民主前線 Hong Kong Indigenous・梁天琦 Edward Leungで、選挙後に議員資格を奪われたのが、本土派の新政党青年新政 – Youngspirationから初当選した游蕙禎 Yau Wai Chingと梁頌恆 Baggio Leungだった。(それぞれのFacebookのページにリンクしています)こうして、本土派などの立法会への進出はできなかったが、香港の独立を視野に入れる明確な主張を盛り込んだ若い世代の登場が明らかになった。
以下の各章については、このブログの(2)を参照してください。
(ブログのTOP、ブログの目次, 新保博彦のホームページ)
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