2024年8月23日金曜日

『正法眼蔵』現代語訳のデジタル版の出版を期待

日本の代表的な仏教書、哲学書のひとつで、道元が著した著作『正法眼蔵』を読むために、比較的安価ないくつかの現代語訳を集め、比較してみました。まず結論を以下の通り図表化しましたので参照してください。最下段の岩波文庫版は校注のみなので、実質的な比較は行なわず、参考として掲げました。

 なお、表の検討の後、表での評価とは別に、私のような専門家ではないものにとっての、現代語訳の評価を、いくつか例を挙げて試みます。














   

 『正法眼蔵』のような難解な古典を読むためには、キーワードや、様々な表現を相互に比較・参照しながら読むことはとても重要な作業です。そのためには、何よりもデジタル版が不可欠です。上記3書のうち、増谷訳はデジタル版がありません。石井訳にはKindle版がありますが、テキストの検索ができず、ハイライトもできず全く不十分です。中村訳は高価な印刷版がありますが、インターネット・アルヒーフには様々な形式の版が掲載されています。それらはとても有益ですが、e-pub版とテキスト版の両方をあわせて使わないといけません。
 このような広く読まれるべき重要な著作が、未だに不十分な形で出版されていることに、本当に驚きました。多くの読者にとって使いやすい現代語訳(原文付き)のデジタル版が、早く出版されることを期待します。

 次に、『正法眼蔵』のいくつかの重要な箇所を、原文と上記の3書の現代語訳を一覧にし、比較して考えてみます。同じ箇所を比較するために、一部の文字は赤字にしました。最下段には、私の読みやすさという点での評価をまとめました。
 『正法眼蔵』3つの現代語訳比較表 (pdfファイルです。クリックして開いてください)

 以上の検討から、『正法眼蔵』を読むのに当たっては、増谷訳をデジタル化し(様々な方法が考えられます)、原文と現代語訳を相互に参照しながら読む、現代語がわかりにくい場合には、中村訳を参照する、という方法を採るのが良いのではないでしょうか。
 今後については最初に指摘したように、多種多様な利用が可能となるデジタル版が出版されることを期待しますが、さらに、そのうちの現在語訳を私たちが日常的に使う表現に、可能な限り近づけて欲しいと言うことを付け加えたいと思います。