2019年10月15日火曜日

格安スマホも3代目:Asus Zenfone 6を購入

Asus Zenfone 6
格安スマホは以下の様な経緯でついに3代目となり、Asus Zenfone 6を購入した。
1代目:2014年4月に購入し、特に大きな問題なく使っていたスマートフォンAsus Fonepad Note 6が、2016年10月に突然起動しなくなった。使用期間は2年半、結局原因不明のまま。
 詳しくは、スマートフォンが突然起動不能に、その経緯と必要な対策 (2016.10.20)
2代目:やむを得ずAsus Zenfone Maxを購入、2019年9月まで使い続けてきたが、しだいに動きの悪さ、性能不足に陥り、様々な手を尽くしたが、主要なアプリが自由に使えなくなる。使用期間は少し延びて約3年。
3代目:こうしてやむをえず新しい機種に乗り換えることにしたが、格安スマホの選択肢が小さくなっていると感じる。ファーウェイや中国製が抱える情報漏洩問題を考えると、適当な価格ではAsus以外に選択肢無しと言うことで、最新モデルでこれまでよりもかなり高価なAsus Zenfone 6を購入した。OCN モバイルから購入したので、現在(2019.10.15)の価格56,900円(5,000円の割引価格を含まない)より少し安かった。

手続きは簡単だった。
1 MNP予約番号の取得:MNP予約番号電話番号そのままで他社から乗り換えの場合のみ、利用期間が決められているので、素早い手続きが求められる。
2 本人確認書類と支払のためのクレジットカードが必要。

Asus Zenfone 6の特徴を以下にまとめた。
NTT Communications Corporationデータを抜粋
・メインメモリと内蔵ストレージは十分、気持ちよく動作してくれる。
・ディスプレイは6.4インチだが、画面いっぱいに配置されているので、本体サイズは前の機種のAsus Zenfone Maxよりも小さい。
・バッテリー容量が大きく確かに駆動時間は長いが、今のところその大きさの実感はそれほど感じない。私の使い方などに改善の余地があるかもしれない。
・この機種の最大の特色のひとつは、通常時は背面側に収納されたカメラが、インカメラとして使うときにぐるりと回転し、前面に現れる「フリップカメラ」である。カメラの性能は十分なので、これから使い慣れてみたい。

最後に、使用開始にあたっての問題をいくつか指摘ししたい。
右の画像は、左がマニュアル、右下がSIMカード、右上がSIMカードをスマホ本体に挿入する器具(スマホに付属)である。
問題は、
・Asusが提供する説明書があまりにも簡単過ぎること、web上で詳しいpdf版が欲しい。
・通信会社から提供されるSIMの取り出しがかなり難しい、中央の上の空の部分にこのスマホに使うnanoSIMが入っていた。簡単でも良いので、傷つけないように取り出しができる簡単な説明書は付けて欲しい。

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2019年9月17日火曜日

李榮薫他『反日種族主義』と朱益鍾『大軍の斥候』(2)

(1)から続く、以下は『大軍の斥候』書評の各章からの抜粋。「・・・」は同書のページ数。詳しくは詳しくは「書評 朱益鍾『大軍の斥候 韓国経済発展の起源』書評:李栄薫編著『反日種族主義』その2)」私のWebsiteの2019年の論文で参照してください。

(第2章 孕胎)
1930年代の京城紡織
第2章では、京城紡織を率いることになる金氏についての説明から始まる。「蔚山金氏備邊郎公派に属する金氏家は、朝鮮王朝初期以来、全羅南道長城地方に生活基盤をもつ湖南名門家の後裔である。」(35)金氏は、「勤勉さと質素さ、経済動向に対する正確な感覚」(44)で、着実に土地の所有規模を拡大した。
金氏の若い世代、「金性洙と秊洙は、日本留学を通じて近代社会と近代知識を体験、勉強し、近代化という時代の課題を自覚した。しかしそれよりもっと重要なことは、留学生活を通じて当時最高のエリートたちのネットワークを構築したことである。」(60)

(第3章 不安な出発)
1930年代の京紡の役員
ようやく京城紡織が設立される。「創立発起人は1919年5月に創立総会を開催し、同年10月に設立許可を得た。・・・総2万株のうち3,790株を発起人が引き受け、残り1万6,210株は一般から公募した。」(78)
いよいよ朝鮮人主導の本格的な株式会社が創設された。すでに日本では、幅広く株主を求めた多数の株式会社が設立され、その一部が海外にも進出していた。京城紡織はその動きに学んでいたのである。

(第6章 絶頂期へ:1938~1945年まで)
1930年代後半の日本の満洲への本格的な進出にともなって、京城紡織も満洲での事業の拡張を進める。「朝鮮でこれ以上の事業拡張を望めなかった金秊洙が朝鮮の外、満洲で活路を模索し始めたのは当然のことともいえる。その結果物ともいえるのが、1939年12月に京城紡織の出資で設立した資本金1千万円の南満紡績株式会社(以下、南満紡績と略する)である。」(174)

終章
朱益鍾氏は全体のまとめとしてこう書いている。「エッカートは、殖産銀行からの借入れや出資、日本の貿易商からの原料綿糸の供給、日本の紡織会社からの設備導入と技術提供、日本人綿布商を通した製品販売、総督府の干渉による労働争議の解決、日本の満洲進出に伴う満洲進出などを詳細に実証した。京城紡織の日本人企業および総督府との緊密な交流・協力関係を明かしたのは、エッカートの大きな功績である。
しかし、韓国人企業や企業家は日本帝国が養育した存在であるという彼の結論は、取引関係を支援、あるいは依存関係とみる一種の論理飛躍である。」(204)
しかし、朱氏はその関係は一方的ではなく、次の通りであると説明している。「つまり、京城紡織と植民地金融機関、日本人企業の関係は、基本的に前者に対する後者の支援、協力の関係というよりは、一般的な取引関係、すなわちgive-and-takeの相互利益関係であった。」(205)

私も、Japanese Companies in East Asia: History and Prospects: Expanded and Revised Second Editionで詳しく検討しているように、朝鮮人企業と朝鮮総督府、日本企業との関係は、市場経済と市場中心型コーポレート・ガバナンスを基盤にした相互依存関係であり、私の基本的な用語であるCollaborationとAllianceの関係であったと考えている。両者は、市場経済と企業活動の発展について、共通の目標と課題を抱えていた。

終章の最後の節は「優れた学習者:大軍の斥候」と記され、書名の理由を示している。「優れた学習者で成功的な後発者であった日本植民地下の京城紡織は、李光洙が表現したように「後ろに迫る大軍の斥候」であったのである。」(218)

朱益鍾氏の研究は、広範囲で具体的な資料を駆使し、エッカートの研究を朝鮮(韓国)側の立場と役割を明確にさせつつ、いちだんと推し進めたものと言えるだろう。朝鮮・韓国経済史に興味を持たれた方にはぜひとも読んでいただきたい書籍である。

朱益鍾氏も著書の一人である、『反日種族主義』について詳しくは、私の論文書評:李栄薫編著『反日種族主義』その1落星垈経済研究所の経済学者などによる批判」を、2019年の論文でご覧ください。
戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判の最近の動向をまとめた『論文・書評集:戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判』は、以下に掲載しています。新保博彦の日本語版Website TOPページ

左上の写真
写真内の右上:東京留学中の金性洙(左)と金秊洙、左上:1921年の金性洙、左下:1921年の金秊洙(エッカート著の冒頭写真集2ページ目)右上の写真写真内の上:1930年代の永登浦にあった京城紡織株式会社の航空写真、下:1930年代の京紡の役員、後列(左から):金在洙、李康賢、崔斗善、尹柱福、前列(左から)閔ピョンス、玄俊鎬、金秊洙、朴興植(エッカート著の冒頭写真集5ページ目)

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李榮薫他『反日種族主義』と朱益鍾『大軍の斥候』(1)

李榮薫他『反日種族主義』
韓国の文在寅政権による継続的かつ徹底した反日政策に対して、ようやく韓国内の研究者が包括的に批判した著作が刊行された。李榮薫ソウル大学名誉教授らが著した『反日種族主義』(2019年)である。同書には、李榮薫氏とともに、金洛年、金容三、朱益鐘、鄭安基、李宇衍の諸氏が論文を載せている。

『反日種族主義』と李承晩TV
この著作はとても興味深いものの韓国語で書かれているので、日本人の多くは読めない。しかし、李榮薫ら著者達は、その主張が有力メディアが取り上げる機会が少ないので、YouTubeで李承晩TVを開設した。第1回は以下の通りである。日本語字幕も付いているので、とても便利である。
1. 反日種族主義を打破しようシリーズを始めるにあたって

朱益鍾氏はじめ6名の著者、池上彰SP、2020.2.2
(2020.2.3追補)
『反日種族主義』に投稿した研究者の研究
李承晩TVは一般向けに作成されているので、残念ながらその主張の詳しい説明はされていない。また、『反日種族主義』に参加する研究者の研究も、日本語や英語に幅広く翻訳されていない。
翻訳済みあるいは日本語で書かれた主なものは、李榮薫『大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ』(日本語訳、2009年)、金洛年『日本帝国主義下の朝鮮経済』(日本語版、2002年)、朱益鍾『大軍の斥候 韓国経済発展の起源』(日本語訳、2011年)ぐらいである。優れた研究が多いので、今後、日本語訳や英語訳が刊行されることを期待したい。

朱益鍾『大軍の斥候』
これらの中で、私と同じ専門分野を対象にした『大軍の斥候』は、2011年に堀和生監訳・金承美訳で日本経済評論社から刊行された。本ブログでは、2回に分けて同書を紹介したいが、詳しくは「書評 朱益鍾『大軍の斥候 韓国経済発展の起源』書評:李栄薫編著『反日種族主義』その2)」私のWebsiteの2019年の論文で参照してください。

『大軍の斥候』の構成は以下の通りである。
序章、第1章 巨大な新しい波、第2章 孕(よう)胎、第3章 不安な出発、第4章 周辺部において:1920年代、第5章 中心部へ:1930~1937年、第6章 絶頂期へ:1938~1945年、終章
著者の朱益鍾氏の略歴は、日本語版によると以下の通りである。「1960年生まれ、ソウル大学経済学科および同大学院卒業、現在ソウル信用評価情報株式会社信用評価担当取締役理事。経済学博士、専攻は韓国近代経済史、韓国近代産業発達史、企業史。」

この著作の最も重要な特徴は、京城紡織とそれに関連する産業・企業についての具体的な資料が非常に豊富であることである。特に朱氏が企業史研究者であることからわかるように、京城紡織の財務諸表をあらゆる時期について駆使している。また、本文だけではなく、日本語版巻末にも多数の図表が掲載されている。
これらの多数の資料と図表を用いた議論において、朱氏は予断と偏見に基づくイデオロギー的な批判は徹底して避けている。金氏一族や朝鮮人企業家への根拠の曖昧な賛辞や、朝鮮総督府や日本企業への一方的な批判は行わずに、それぞれの資料から得られた結論をそのままわかりやすく述べている。

このような優れた方法によって、『大軍の斥候』はエッカート『日本帝国の申し子』が切り開いた朝鮮・韓国資本主義論に新たな展開を生み出した重要な労作である。『反日種族主義』への関心が高まっている今、改めて専門の研究者だけではなく、一般の多くの人々が読んで欲しい著作である。

各章ごとの紹介は、次回ブログの(2)を参照してください。

エッカートについて詳しくは、私の論文「書評 エッカート『日本帝国の申し子』」を、2020年の論文ご覧ください。

『反日種族主義』について詳しくは、私の論文書評:李栄薫編著『反日種族主義』その1
落星垈経済研究所の経済学者などによる批判」を、2019年の論文でご覧ください。
戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判の最近の動向をまとめた『論文・書評集:戦間期朝鮮経済史と反日種族主義批判』は、以下に掲載しています。新保博彦の日本語版Website TOPページ

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2019年8月22日木曜日

未発見の大作 伊藤若冲「十六羅漢図」

近年、江戸時代の有名な絵師の作品の発見が相次いでいる。しかし、伊藤若冲にはまだ未発見の大作がある。
大阪商工協会∥[ほか]編「臨幸記念名家秘蔵品展覧会図録」、1933年の中に、府立大阪博物場所蔵として、若冲筆「十六羅漢」との記載があり、下記の図(白黒)が掲げられている。しかし、現在のところ、未発見である。海外に流出したのだろうか?
この情報は、太田彩『伊藤若冲 作品集』のコラム「不思議な画面ー枡目描き」、p.137を利用させていただいた。同書の写真はやや小さいので、改めて原書からコピーした。
全体図、八曲一双
十六羅漢とは、「世にとどまって仏法を護持する16人の羅漢(阿羅漢、尊敬を受けるに値する者)。・・・玄奘訳『法住記』に十六羅漢の名が列記され、以後、中国や日本で「十六羅漢像」が盛んに描かれるようになり、敦煌にも五代ごろの壁画がある。」(定方 晟、日本大百科全書)
左の四曲

太田氏の著作に依れば、若冲には、十六羅漢図は他にもあるが、十六羅漢全員が描かれていない。その意味では、若冲の仏教観の理解するためにも、とても重要な作品のひとつであるだろう。

右の四曲
まず、この作品の特徴は、若冲の作品とされる「鳥獣花木図屏風」や、「樹花鳥獣図屏風」と同様に、枡目描きで描かれており、鮮やかな色を多用していることが推測される点である。

ほぼ中央にはお釈迦様が、周囲には十六羅漢がひとつひとつ豊かな表情で、個性を持って描き分けられている。
ただ、十六羅漢の視線は様々な方向を向いているので、ダ・ヴィンチの最後の晩餐の様なひとつのテーマで描かれているのとは異なっているように思われる。

作品の下の部分を中心に、様々な花が咲き乱れている。画面左端には、他の枡目描き作品にも登場する白象が見え、他の動物もいるようだが、残念ながら画像が粗いので確認できない。

なお、この画像には落款が無いようである。「鳥獣花木図屏風」や、「樹花鳥獣図屏風」と同様に、今後も若冲の作品がどうかについての専門的な研究が進められるだろう。
なお、太田彩氏のコラムは、上記2作品についての重要な問題提起も含まれるが、改めて考えてみたい。
ともあれ、この十六羅漢図が早く発見され、公開されることを期待したい。

(追記:以上の内容のYouTubeを作成しました。8月2日)



追記(2024.7.9)
この「十六羅漢図」(「釈迦十六羅漢図」)がデジタル復元され、それがNHKの「若冲 よみがえる幻の傑作〜12万の升目に込めた祈り〜」で放送されます。(7月14日(日) 午前9:00〜午前9:45)

2019年8月13日火曜日

甦った鈴木其一の作品を満載、河野元昭『鈴木其一』

鈴木其一の本格的な研究書、河野元昭『鈴木其一』(東京美術、2015年)をぜひおすすめしたい。掲載された作品数は非常に多く、其一の多様な作品を深く味わうことができる。また、其一と同時代の人々、例えば北斎などの作品との共通性なども知ることができる。それを理解するための河野氏の解説は専門的で詳しいが、一部にはかなり難解な部分もあるように思われる。

「其一は、彼が活躍を続けていた幕末の頃、江戸で最も人気のある画家の一人でした。その名声は明治時代に入っても保たれていましたが、やがて忘れ去られていったようです。其一が不死鳥のようによみがえるのは、昭和四十七年(一九七二)のことです。」(同書、はじめに、以下では引用はページ数のみ)

同書は、3つの章から構成されている。
第1章 草書落款時代 文化10年(1813)~天保3年(1832)
第2章 噌々(かいかい)落款の時代 天保4年(1833)~天保14年(1843)
第3章 菁々(せいせい)落款の時代 弘化元年(1844)~安政5年(1858)
なお、彼の師、酒井抱一については、其一とともに、「奈良・大和文華館で酒井抱一展、Houitsu Sakai in Nara」で紹介したことがある。

以下で鈴木其一の代表的な5作品を紹介するが、それら以外にも、「朝顔図屏風」、「群鶴図屏風」、「柳に白鷺図屏風」などのよく紹介される作品も、もちろん掲載されている。








やはりまず掲げるのは、其一の最も有名で特徴的な作品である「夏秋渓流図屏風」(六曲一双)である。同書によれば、第2期の代表的な傑作とされている。(29)
何よりも驚かされるのは、金地を背景として豊かな色彩で覆い尽くされていることである。流れる水は全体が濃い青色で波は金線、山の大部分は緑一色、水辺と水中の岩は黒を中心とした限られた色である。木々は比較的写実的で、右隻には真っ白な百合、左隻には赤く色づいた紅葉がある。全体が非常に写実的であるように見えて、実は深く濃い色で激しく流れる渓流が創造されている。そうした創造が逆に自然の力強い姿を見事に写しているように思われる。
私は、私のWebsiteの英語版のTOPページにこれを背景として使っている。



左:昇竜図、制作年記載無し
「昇竜はお目出たい図様にもかかわらず、この雲は妖雲と呼びたい。・・・いや、幕末バロック(37頁参照)と呼ぶにふさわしい。」(64)
「夏秋渓流図屏風」の色彩豊かな画面とは打って変わって墨一色の濃淡で昇竜を描いている。竜の背景には黒い雲が覆っていて竜の動きを強調している。もうひとつの興味深い其一の作品である。

左:三十六歌仙図、弘化2年(1845)
再びカラフルな作品。「天地の目もあやな配色と蠕動する流水には、其一の個性の一端がよく示されている。」(78)三十六歌仙の衣装のそれぞれが非常に強い色を用いて鮮やかに、またその表情も丁寧に描き分けられている。
そして、やはり琳派に独特の青色の流水が様々な扇とともに背景を作っている。

左:向日葵、制作年記載無し
背景はすべて捨象され、一本のみの向日葵が描かれている。花の部分は徹底して写実的に、植物図鑑のように描かれているが、「葉は淡墨に緑青をたらし込み、金泥で葉脈を描いて」(『江戸琳派の美』、p.72)装飾的に対照的に表現している。

下:四季花鳥図屏風、六曲一双、1854年、「三十六歌仙図」とともに、第3期の代表的な作品とされている。(76)
右隻は春から夏にかけての植物が約二十六種類。左隻は秋から冬にかけての植物が約二十二種類。背景は金地以外には無く、花の種類で季節の移ろいを表してはいるものの、季節感が強く感じられない。それぞれの花は空中に浮いており、自然に深く根ざして咲く花には見えない。其一が創造した装飾的な自然であり、それがこの画のねらいだったのだろう。


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2019年8月3日土曜日

「東京裁判」4K版、今日から公開

読売新聞、8月2日夕刊
以下は、読売新聞8月2日夕刊の記事である。
「対米英開戦時の首相、東条英機らA級戦犯の法廷での言動を生々しくとらえたドキュメンタリー映画「東京裁判」(初公開1983年)の4Kデジタルリマスター版が今月公開される。」

関東では今日から上映される映画館もあるが、関西では読売新聞によれば、大阪のシネ・ヌーヴォ、京都シネマ、神戸・元町映画館で10日から公開とのことである。

ところで、私のブログでは「東京裁判」を、主題として2回取り上げた。ぜひご参照ください。
DVD 東京裁判をもう一度紹介します」(2018年8月16日木曜日)
DVD「東京裁判」を改めて見直す」(2012年8月16日木曜日)

『戦争裁判余録』から
なお、そのブログでは、被告人弁護団のベン・ブルース・ブレークニー(Ben Bruce Blakeney, 1908年-1963年3月4日)弁護人と、ファーネス弁護人の弁護の内容を、東京裁判の本質と、アメリカの民主主義の強さを表すものとして詳しく紹介している。

上記の読売新聞は、米国人弁護人について、次のように紹介している。「彼らは「勝者による敗者の裁判は不公正」だと指摘。真珠湾攻撃を殺人罪で裁くなら広島への原爆投下を命じた者の名前も挙げると迫っている。」

この夏休みとお盆の期間に、多くの方がこの4K版をぜひ見ていただきたいと思う。

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2019年8月2日金曜日

今の香港を理解するのに必須:遊川和郎『香港 返還20年の相克』(2)

(1)から続く

第5章 迷走する民主化と軽量化する行政長官
Wikipedia. 2014年香港反政府デモ
2 雨傘運動とその後」では、「2014年6月10日、中国政府は『香港白書』を発表した。・・・同白書は、「1997年の返還以来、香港の民主的な政治制度は安定、発展してきた」と現状を肯定するとともに、「香港の『高度な自治権』は固有なものではない、中国中央指導部の承認によって与えられるものだ」と高圧的に民主派の動きをけん制した。」(166)ことが明らかにされる。
 この白書を背景にして、2014年に中国全人代常務委員会から「8.31決定」が出された。それは、「これまで1200名の選挙委員による投票を18歳以上の全ての香港市民(約500万人)に拡大する一方、立候補者は指名委員会の半数以上の同意を必要とすることとし、事実上民主派からの立候補を排除した。確かに「1人1票」の選挙権は認められたものの、被選挙権は中国側がコントロール可能ということである。」(167)
 この決定に対して、9月には香港の学生達は、催涙弾から身を防ぐために雨傘を使って抗議と反対の意思表示を行った。これがいわゆる雨傘運動であった。「実際に運動を指揮した学生団体のリーダーが「學民思潮 Scholarism」の黃之鋒 Joshua Wong(Facebookのページにリンクしています)と香港学生聯盟(学聯)代表の周永康だった。」(168)しかし、学生達の占拠を伴う運動は具体的な成果を得られないまま終結した。

第6章 劣化する国際経済都市
 第6章では、再び経済に焦点が合わされる。まず、「1 老化する財閥」では、30年一日の財閥ランキングが表6-1、表6-2の対比で示される。「2 都市間競争での劣後」では、香港と上海が比較される。
 興味深いのは、香港を都市国家、あるいは人口数百万人規模で1人あたりのGDPが1万ドルを超える経済体との比較した、「世界のスモール・オープン・エコノミー」(208-)である。貿易や金融での優位を活用している国、あるいはハイテク産業への特化を進めている国などの事例が紹介されている。香港がどれを採用できるか、今は明らかではないが、中国への依存を弱め、より自立した経済を構築しようとすれば、この点を明らかにしていく必要があるだろう。

終 章 竜宮城のリニューアル
 終章の最後の小節:「休養生息」(立ち止まって考える)で、遊川氏は本書を次のように締めくくっている。「「一国二制度」や「50年不変」が返還交渉当時、国際社会にも受け入れられた背景には、改革開放に乗り出したばかりの中国自身が50年の聞には変わっているだろうという現実的な期待があった。すなわち2047年までの50年は中国に対して与えられた猶予期間でもある。これまでの20年問、中国は目覚ましい経済発展を実現したが、体制維持の窮屈さは逆に増していることが問題である。最終的には「一国二制度」の「一国」のあり方が問われている。」(222)
 しかしながら、この終章は、中国「一国」がどうなるかという問題とともに重要な、もうひとつの香港自体の将来像にはあまり明確には触れていない。香港の経済的・政治的自立のためには何が必要かについて、独立派を含む民主派が具体的な政策を立案できるかどうかが問われていると思われるが、遊川氏もこの点について詳しく触れていただきたかった。

 最後に、香港の現状を包括的に検討した本書はその欠落を埋める重要な著作で、本書を通じてひとりでも多くの読者が、現在の香港の経済的・政治的な動きと今後の可能性について考える機会になることを、改めて期待したい。

なお、(1)で紹介した、私のWebsiteに掲載した書評では、2 補論:香港の金融市場と企業を付けた。そこでは、香港の金融市場と主要な企業の特徴を見ると、香港での民主化への、若い世代を中心とする幅広い人々による活発な動きにもかかわらず、経済と政治の両面での、香港の中国からの自立と民主化への道筋はなお大きな困難があることも指摘した。

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