2016年2月4日木曜日

東洋経済とダイヤモンドの大学ランキング2015

恒例の大学ランキングが発表されている。『週刊東洋経済臨時増刊 本当に強い大学2015』(2015年5月27日号)と、『週刊ダイヤモンド』 2015年11月7日号である。それぞれが独自の立場で、有益なデータを公表している。

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まず、週刊東洋経済であるが、毎年発表されるランキングで重視してきたのは、「教育力」、「就職力」、「財務力」の三つだったが、今回「国際力」が加わった。各項目について2~4の指標を採用、計12指標を偏差値に換算し、その合計を平均したものを総合ポイントとしてランキングしている。
その結果、上位10位11大学に7旧帝大、早慶、そして青森中央学院大学と豊田工業大学がランクインした。どの力で各大学が評価されたのかが具体的にわからないが、4つの総合力で評価しているため、旧帝大や早慶が順当にランクインされた。一方で、青森中央学院大学では、14年に看護学部を設置し志願者が異常値といえるほど激増、高い外国人学生比率も寄与し、豊田工業大学では、就職率や自己資本比率の高さが際立つと言う。
財務力については、志願者数増減率(%}、経常利益率(2013年度、%)、自己努力収入比率(2013年度、%)、自己資本比率(2013年度、%)が検討されているが、必ずしも財務データとは言いにくい数値が含まれている。また、例年掲載される大学四季報は巻末にあるが、やや扱いが小さくなっている。詳細な財務データよりも、将来的な発展要因と一般の人々へのわかりやすさを狙った企画にシフトしていると言えるだろう。

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次に、刊ダイヤモンドである。同誌は、グローバル教育力、就職力、研究力の3つの指標を、それぞれ45, 30, 25点ずつで評価し、その合計点でランキングを作成している。上位10位には、7旧帝大と慶應大学(早稲田大学は11位)、東京工業大学と秋田の国際教養大学がランクインしている。図の通り、国際教養大学は、グローバル教育力が非常に評価が高い。
週刊ダイヤモンドは財務力が総合評価には含まれていないので、巻末で私立大学のみの財務力ランキングを掲載している。そこでは、収入(億円):帰属収入、利益率(%):(帰属収入ー消資支出)÷帰属収入、自己資金比率(%):(資産ー負債)÷資産が、それぞれ40, 30, 30点で評価され合計されている。その結果、帝京大学、聖路加国際大学、近畿大学、川崎医科大学、川崎医療福祉大学が上位を占めている。総合ランキングとの関係は明らかではない。

ところで、週刊東洋経済も指摘しているように、赤字に陥っている私学は、やや減少しているとは言え全私学の三分の一である。両誌は、この問題にももっと焦点を当てるべき、あるいは別に企画すべきだと思われる。ここで、経営的な危機に陥っている大学に対して、両誌の調査が示唆していることなどをまとめておきたい。
第1に、求められているのは、時代の変化に対応した特色ある大学作りである。週刊東洋経済の調査での青森中央学院大学、豊田工業大、週刊ダイヤモンドでの国際教養大学のように、他に例をみない大学・学部作りができれば、2つの大学のように東北地方という地理的なハンディを負っているにもかかわらず、旧帝大と競争できているのである。
第2に、両誌に対してを含め社会に積極的に情報を公開し、公開された情報を改革に生かすことも求められている。特に、経営危機に陥っている大学ほど、経営状態の正確な把握、詳細な財務諸表の公表が必要である。そして、経営改革を進めるためには、周辺企業の経営者、周辺自治体関係者、会計士、弁護士、コンサルタントなどの経営の専門家を積極的に経営に参加させるべきだろう。その結果、大学との直接の利害関係を持たない外部理事の比重を高め、内部関係者の比重を下げることは、一般の企業の場合と同様に不可欠な課題となっている。いわゆるガバナンス改革である。
第3に、そのようにしても、経営危機に陥った中小大学で単独での生き残りは非常に難しい。では何が可能か。大学が持つ経営資源の有効な活用をめざして大学間の連携を強化し大学の再編・統合をめざすことである。大学には研究や教育の重要な経営資源がある。図書館、IT関連設備、グラウンド、教室などはどこにでもあるその一例である。これらを共有する仕組みを作り、大学間の信頼関係を醸成し、連携から再編・統合への踏み出すことが必要だろう。これは、中小の大学の学生生活の充実や教職員の仕事環境の改善にも、直ちに貢献できると思われる。

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