氏の死を悼む行動や出版は、残念ながら決して多くはなかった。出版としては、ニューズウィーク日本版(7月25日号)がSpecial Reportを掲載し、「彼の早過ぎる死に中国政府は重大な責任を負う」と書いた。
劉暁波氏の構想は、彼の著書「天安門事件から「08憲章」へ」によく表れている。私は私のブログ「決して忘れてはならない天安門事件と08憲章、Tiananmen Square protests of 1989 and Língbā Xiànzhāng」(2015年6月1日(月曜日))で詳しく紹介した。
改めて以下に目次を示すので、ぜひ多くの方が読んでいただきたいと思う。
「一 前書
二、我々の基本理念
中国の未来の運命を決定するこの歴史の岐路に立ち、百年来の近代化の歩みを省みて、下記の基本理念を再び言明する必要がある。
自由、人権、平等、共和、民主、憲政
三、我々の基本的主張
1、憲法改正、2、分権の抑制的均衡、3、立法による民主、4、司法の独立、5、公器の公用、6、人権の保障、7、公職の選挙、8、都市と農村の平等、9、結社の自由、10、集会の自由、11、言論の自由、12、宗教の自由、13、公民教育、14、財産の保護、15、財税改革、16、社会保障、17、環境保護、18、連邦共和、19、正義の転換
四、結語」
重要なのは、最後に「署名規則」があり、「一 本憲章は公開署名とする。二 本名または常用のペンネームで署名し、所在地と職業を明記されたい。」と記述されたことであり、署名者は303名(第一次)となっていた。
憲章が公表されてほぼ10年が経過したが、中国の民主化をめぐる状況はいっそう悪くなっている。中国国内での民主化運動に対する徹底的な弾圧、インターネットの管理と統制はさらに強まり、対外的には南シナ海などのへ海洋進出、香港の一国二制度の形骸化、台湾の外交活動への妨害、日本への挑発的な軍事行動、などである。
こうした行動を支えているのは、中国経済の発展である。中国経済の影響力は、内部に深刻な問題を抱えながらも拡大している。中国経済に依存が深まっている日本や、ヨーロッパ諸国が、民主化運動を弾圧する中国政府に批判を抑制している。
しかし、民主化運動への弾圧と独裁政治はいつまでも続けることはできない。弾圧を続ける過程で、政治的な支配層や有力な企業に腐敗や不正が拡大し続けるからである。経済成長の鈍化、格差の拡大とともに、民主化への移行が現実となるだろう。そのときに再び劉暁波氏の遺産が再び脚光を浴びるに違いない。
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