2024年9月19日木曜日

細見美術館「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」

細見美術館で「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」が、2024年9月7日(土)から11月24日(日)まで、開催されているので、久しぶりに同美術館に出かけた。

細見美術館と言えば、2016年の「春画展」が、展示された作品の数と参加者の数で、予想をはるかに超えていたことを思い出す。私のブログでも詳しく紹介した。

今回の展覧会は、「「美しい春画」と銘打った本展覧会のコンセプトは、まさに『美的』な春画である。江戸時代、浮世絵師のみならず実に多くの絵師が春画を描いている。その品質にも幅があり、一部の出来のよくない春画が春画全体の評判を落としてきたことの要因に数えられるだろう。本展覧会では美的に優れた春画を精選した。」(樋口一貴)

今回特に注目されているのは、まず、「北斎の肉筆春画の傑作「肉筆浪千鳥」、日本の美術館で初公開!」である。全部で十二図あり、1810-19年に制作されている。どれも画面全体を使い、色彩と表情が豊かに描かれている。左の図は、図録p.56-7に掲載されている一図であるが、本ブログと美術館web siteでは、部分図である。

もうひとつ特に注目されているのが、日本の美術館で初公開となる、歌麿の大作2点である。

まず、「夏夜のたのしみ」。1801-06年に制作され、縦61.7cm、横105.3cmにもなる大きな掛け軸である。若い恋人達が夏の夜に戯れている場面である。もちろんこれも部分図である。

歌麿のもうひとつの作品が「階下の秘技」である。制作されたのは、「夏夜のたのしみ」と同じ年、縦54.8cm、横68.8cmとこれもまた大きい掛け軸である。やはり、この図も部分図である。

これらは、掛け軸なので、床の間に飾って、多くの人々が共に楽しんだのだろう。春画の描かれた場面が開放的であるのと同様に、鑑賞された場所も開放的なのだろう。春画は、“秘かに愉しむもの”ではなかった。

なお、以上の代表的な作品を含めて、展覧会では精選された美麗な春画67件が展示されている。


最後に、この展覧会の展覧会公式図録を紹介しておきたい。ページ数は212+xiiと、とても充実している。図録の写真は下の通りだが、画像からわかるように、閉じ方が、前回の「春画展」と同様に、糸綴じとなっていて、各図が完全に開かれた状態で見ることができるのが、とても良い。

目次は、以下の通り。公式図録で掲載されているのは、もちろん部分図ではないので、ぜひ図録で春画を楽しんでください。

鼎談 美しい春画を愉しむ 對龍山荘にて、ごあいさつ、「美しく、楽しい春画」(小林忠)

I 上方春画の世界、II 北斎・歌麿の競艶 「葛飾北斎<肉筆浪千鳥>ー世界から日本へー」(伊藤京子)、III 魅惑の浮世絵春画

「美しい春画」(樋口一貴)、「春画の見方、味わい方」(山本ゆかり)

作品解説、絵師解説、作品目録」