2019年6月25日火曜日

中之島の街事情マガジン『島民』は情報満載

2019年春号表紙
中之島の「街事情」マガジン『島民』は、「「(中之島)島民」にとって切実かつ有意義な情報を、コンスタントに提供することで、「島で生活をしている」という愛着をもっと高めてもらうことが狙いです。」
すでに2019年6月号(夏号)の130号まで刊行されている。ページ数も129号では15ページもあり、中之島に関する情報が満載である。128号までは『月刊島民』だったが、2019年から年4回になりタイトルも『島民』となった。
ナカノシマ大学のページでバックナンバーを読むことができる。

以下では、私の個人的な思い出を含め、中之島というかなり狭い空間に密集している貴重な施設・建物を紹介したいくつかの『島民』を紹介したい。

「春号 Vol.129、ミュージアムトピックス、2019年4月1日発行」と、Vol.125(2018年12月1日発行)、大阪中之島美術館コレクション」
の2つの号では、3月末にいよいよ建設工事が始まり、2021年度に開館予定の大阪中之島美術館の紹介がある。

所蔵作品の多さや斬新な建物などから、新たな中之島のシンボルになるに違いない。
「島民」Vol.125では、佐伯祐三「煉瓦焼」、小出楢重「菊花」、アメデオ・モディリアーニ「髪をほどいた横たわる裸婦」などが紹介されている。
上記建物の画像は、美術手帖HPから

「月刊島民」122号p.3
「Vol.122(2018年9月1日発行)、大阪市中央公会堂」
「島民」Vol.122は、「中央公会堂の建築としての魅力は、なんと言ってもそのわかりやすくシンボリックなデザインにある。」と紹介している。
1999年から保存・再生工事が始まり、2018年に開館100周年を迎えた。

今では多くの人の活動と憩いの場となっているが、私にとっては保存と再生工事が始まる前に、ここで博士号を授与された懐かしい建物である。

堂島米市の図(浪花名所図会)、JPX, HPから
「Vol.103(2017年2月1日発行)、堂島より愛をコメて。」
『島民』Vol.103には、江戸時代の堂島の米取引が詳しく描かれている。堂島では、通常の米の現物取引だけではなく、「「帳合米」と呼ばれる先物取引」が行われていた。それは、「架空の米(帳簿上だけで売買が記録される米)の取引を行い、将来的に決済が行われる」。

今日の金融市場では一般的になった先物取引を行う堂島米会所は、世界に先駆けて1730年に公認された。
なお、東京証券取引所にも、堂島米市場— 世界における先物取引所の先駆け —」の紹介がある。

大阪府立図書館HPから
「Vol.82(2015年5月1日発行)、中之島図書館はすごかった。」
大阪には、中之島と中央の二つから成る大阪府立図書館があり、所蔵する図書は非常に充実している。
その紹介を行ったのが『島民』Vol.82なのだが、残念ながらリニューアル完成前の刊行なので、ぜひ新しい号の刊行を期待したい。

リニューアルによって、歴史的な建造物のひとつとして甦ってとても美しくなり、さらに図書館として使いやすくなった。
私の退職後の研究活動を支えてくれているのは、中央図書館とともにこの中之島図書館である。

中之島には、以上の施設以外にも多くの歴史的な施設がある。『島民』を片手にぜひ歩いていただきたい。もちろんカフェやレストランもどんどん増えており、時間をかけてゆっくりと巡っていただきたいと思う。

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2019年5月21日火曜日

ハウステンボス、今はバラ祭の真っ最中

ハウステンボスに行ってきました。アジア最大級、日本一のバラの街、バラ祭が6月2日まで開かれ、2000品種、130万本という途方もない数のバラが咲き誇っている。ハウステンボスのwebsiteはとても充実しているので、主な写真はぜひそれらを見ていただきたい。
なお、これが終わると、次は日本最多1250品種が咲き誇る「あじさい祭」になるという。

バラは園内だけではなく、ハウステンボス内ホテルの至るところに飾られている。ロビーに広がるフラワーアート「薔薇のホテル」と呼ばれている。
以下は、ホテルヨーロッパ内の写真のいくつかである。左の1枚は、ロビーに入ったすぐのところで写したもので、向こうは朝食やコンサートの会場である。

右は、ロビーからの通路に置かれたものだが、バラの花がボール状にいくつも組み立てられている。ぜひクリックして拡大して見ていただきたい。

ところで、ハウステンボスには、若者向けのいろいろなアトラクションだけではなく、4つの美術館がある。最も中心となるのは、オランダの宮殿を忠実に再現したハウステンボス美術館で、6月24日までは「アール・ヌーヴォーの華 ミュシャ展」が開かれ、世界最多約500点の作品を展示されている。
なお、この美術館の近くにもバラ園があり、中心部から離れているので、ゆっくりとバラの香りを楽しみながら回ることができる。

私が、バラ園の規模と同様に驚かされたのは、ポルセレインミュージアムである。約3,000点の磁器が展示されているそうだが、圧巻としか言いようがない。
展示されているのは、内外から集められた伊万里の磁器だが、このミュージアムのみを目的に、遠方から来ても良いと思えるほどの展示だった。

展示室の規模はそれほど大きくないので、3000点なのだから、展示室の隅々まで磁器が置かれているのだろう。右は、入ってすぐの部屋に飾られている大きな磁器で、カメラには入りきらなかった。

下の写真は、観覧車から見たハウステンボスを写しているが、大村湾が一望できる。この壮大な風景もとてもすばらしく、ハウステンボスからの遊覧クルーズがあるようだが、残念ながら乗る機会は無かった。

ところで、日経新聞 (2019年5月15日)「ハウステンボス、営業2割減益 訪日客が低迷 18年10月~19年3月」によれば、「団体で訪れる訪日外国人客(インバウンド)などが低迷し、入場者数は7%減の130万4000人にとどまった。」と言う。
これほど多様な楽しむ機会を与えてくれる、ハウステンボスの経営が低迷していることはとても残念。上場の実現と統合型リゾート(IR)誘致がめざされているようだが、ぜひとも成功して欲しい。

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2019年4月16日火曜日

シネマ歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』


今年の桜もいつもの年のように見事に咲き誇った。この季節に合わせて上演されたシネマ歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』を見に行った。野田秀樹の作・演出だが、原作は坂口安吾『桜の森の満開の下』『夜長姫と耳男』である。

初めて見たシネマ歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』は、ストーリーの面白さと、劇的な展開、役者達のすばらしい演技、舞台装置や使われている音楽、どれもがすばらしく、本当に驚きの連続で、久々の感動を味わった。しかし、野田演劇の激しいテンポと言葉のやりとりを十分に聞き取れなかったこともあって、結局もう一度見にいくことになった。あわせて『贋作 桜の森の満開の下』もWOWOWで見た。
シネマ版で見れば、舞台全体がいろいろな角度から見られる。そればかりか、役者の表情をごく近くからも見ることができる。とてもおすすめである。

(『野田版 桜の森の満開の下』パンフレットから、以下も同じ)

「満開の桜の森は人の気を狂わせるという」
現代人は桜と言えば、桜の下での宴会を考える。実はそこにはもうひとつの世界がある。

「深い深い桜の森。時は天智天皇が治める時代。
ヒダの王家の王の下に、三人のヒダの匠の名人が集められる。その名は、耳男、マナコ、そしてオオアマ。
ヒダの王は三人に、娘である夜長姫と早寝姫を守る仏像の彫刻を競い合うことを命じるが、実は三人はそれぞれ素性を隠し、名人の身分を偽っているのだった。
そんな三人に与えられた期限は3年、夜長姫の16歳の正月まで。
やがて3年の月日が経ち、三人が仏像を完成させたとき、それぞれの思惑が交錯し…。」

耳男(中村勘九郎)が出会ったのは、美しく残酷な王家の娘夜長姫(中村七之助)だった。耳男の耳を切り落とすように命じる夜長姫と、復讐のために鬼の仏像を制作する耳男、そしていつの間にか夜長姫に心を奪われる耳男を巡る話。また、鬼達を使って天下を取ろうとするオオアマ(市川染五郎、現・松本幸四郎)などの、それぞれの欲望が交錯する話が複雑に絡み合って展開する。

なんと言ってもすばらしかったのは、耳男の勘九郎と夜長姫の七之助の演技だった。勘九郎はほぼ全時間出ずっぱり、七之助は右の画像の様な美しさと妖しさを演じきった。兄弟が二人の主役を演じ分けることができるなんて。

桜吹雪のなか、最後に鬼になった夜長姫の角を切り取った耳男が、夜長姫をその角で一突きにし、夜長姫はゆっくり仰向きに崩れ落ちる。耳男が泣き崩れながら倒れた夜長姫を抱きしめ布で覆うが、姫はいつの間にか消えていく。やはりこのシーンは圧巻だった。
背景で流れる音楽は、「私のお父さん」(プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」)。全く違う背景のはずなのだが、このシーンにぴったりだった。

今のところ、各地で4月25日まで上演される予定です。ぜひともご覧いただきたい作品です。
左は予告編。

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2019年3月3日日曜日

NHK「江戸あばんぎゃるど」(2)

前回(1)に続き、「江戸あばんぎゃるど」第1回の作品をもうひとつ追加したい。

酒井抱一(1761年ー1829年)「桜と楓の屏風」
六曲一双の屏風で、右隻には桜、左隻には楓と、異なる時期の花が同時に咲くという非現実的な構図だが、それが特別な豪華さを生んでいる。
なお、この作品は、『もっと知りたい酒井抱一』には掲載されていない。
酒井抱一の作品でよく知られているのは、本番組でも紹介されている「夏秋草図屏風」である。屏風にはあまり使われていない銀地を用い、激しく揺れる草花で強い風の動きを表現している。
酒井抱一は、その弟子鈴木其一(代表作は「夏秋渓流図屏風」)とともに、その色彩の鮮やかさと豊かさで抜きんでている思う。

以下は、「江戸あばんぎゃるど」第2回に登場する作品である。

土佐光起(1617年ー1691年)「吉野桜図」
土佐光起は、他の画家よりは早い江戸初期に生きている。時期的には他の作品と比べてもかなり前の作品にもかかわらず、その魅力は衰えてはいない。
これも六曲一双の屏風であるが、濃い色に描かれた山々と木々、そして横に長く伸びている金色の雲の中に浮かぶ桜が、本当に空中に浮いて動いているかのように見える。番組では、それを3Dのようだと表現している。

柴田是真(1807年ー1891年)「鯉の滝登り図」
この作品は今まで見たことの無い掛け軸である。普通は描かない左上の部分に滝の先端部分を持ってきて、そこから流れ落ちる滝の激しさを強調している。
さらに、鯉が滝を登るなど現実にはあり得ない独創的なイメージが使われている。
柴田是真については、「別冊太陽 柴田是真」があるが、同書p.106には、よく似た構図で河鍋暁斎との合作が掲載されている。この書籍は柴田の漆芸と絵画の両方を掲載しているが、柴田是真の偉大な業績の全貌がよくわかる。

曾我蕭白(1730年ー1781年)「牛と牧童の図」
六曲一双の壮大な屏風で、右隻には激しくぶつかり合う牛と牧童、左隻には休む牛と笛を吹く牧童が、墨の濃淡のみで描かれている。近づいてよく見ると、牛の目はしっかりとこちらに向いている。
曾我蕭白については、この番組ではこの作品以外にもいくつか紹介されている。どれも大胆に描かれた独創的な作品ばかりで、海外で評価が高い。
なお、この作品は『もっと知りたい曾我蕭白』p.32-33ではないかと思われるが、その作品は、「牧童群牛図屏風」と名付けられ個人蔵となっている。

ここに紹介した作品は、2回の「江戸あばんぎゃるど」のごく一部である。ぜひ再放送して多くの人々に知っていただきたいが、それとともに貴重な作品群の詳細を掲載した本も出版されることを期待したい。

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NHK「江戸あばんぎゃるど」(1)

NHKが放送した江戸あばんぎゃるど」は、日本から流出した作品を中心に、江戸時代の優れた絵画などを多数紹介したすばらしい番組である。
その再放送がなかなか実現しなかったが、ようやくNHK4Kで改めて見ることができたので、私が注目した作品を紹介したい。以下3点は、すべて、エイブリー・ブランデージ (Avery Brundage)が収集したものである。

長沢芦雪(1754年ー1799年)「那智滝図」(サンフランシスコ・アジア美術館蔵)
長澤蘆雪は「もっと知りたい長澤蘆雪」の表紙ともなっている「竜虎図襖」や「寒山拾得図」でよく知られているので、それとはやや異なる方法で描かれた「那智滝図」を見たときは本当に驚いた。
何よりも、白地のままの滝の水が、激しく流れ落ちる様子を見事に表現している。
滝は当時の日本の画家にとっては重要な題材で、「江戸あばんぎゃるど」(2)で紹介する柴田是真の滝図もあわせて見ていただきたい。なお、「もっと知りたい長澤蘆雪」は、この作品は掲載されていない。

森狙仙(1747年ー1821年)「猿図」
森狙仙は猿の画を得意とするが、猿の肌の色の柔らかさ、繊細な毛、表情の豊かさに引きつけられる。
森狙仙の動物の画には、第2回に登場する「群獣図」もあるが、同じ目線で動物をとらえている。
番組中で、西欧の動物は解剖図的に描かれているが、日本の画は動物に命を込めて描いたと説明されている。あらゆるものに神が宿るとする考えが根づいている日本と、人間中心の西欧とではそのような違いがあると言えるかもしれない。
なお、森狙仙にはまとまった研究書が無い。

狩野氏信(1616年-1669年)「鶴図屏風」
六曲一双の壮大な屏風。アメリカに渡った作品にはこのタイプがかなりあるようだ。横幅の広さと、折りたたんだ屏風の構造から、描かれた題材の動きがうまく表現できるように思われる。右隻では鶴が飛び立ち、左隻では舞い降りて骨を休めている様子を描いている。
説明している女性と比較して、屏風がどれほど大きいかがわかるが、現代の超特大横長ディスプレイでその動きを眺めているような感じになる。画面でもわかるように、2014年に修復が終わったという。
狩野氏信についてはまとまった研究書が無いが、「源氏物語画帖」などの作品がある。

なお、次回の私のブログでは、「江戸あばんぎゃるど」第2回の作品を中心に紹介したい。

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2019年2月22日金曜日

奈良公園にようやく春、片岡梅林から

ようやく春が近づいてきたので、奈良公園の梅を見るために、片岡梅林へ出かけた。
片岡梅林は、「春日大社参道一の鳥居付近から料理旅館「江戸三」の方向に歩いていくとやがて250本ほどの梅林がある。」(奈良市観光協会のwebsiteから)
写真のとおり、様々な色の梅の木が植えられている。春の訪れを鹿も感じているのか、梅の木の下でのんびりと過ごしている。奈良公園ならではの風景。

今日(2019年2月22日)は、久しぶりによく晴れて、梅が青空に映えてとても美しく見える。
満開まではもう少し時間がかかるようだが、この時期はなかなかすっきりと晴れないのでとりあえず満足。
左の写真の向こうに、ぼんやりと浮かぶのは、浮見堂。
「奈良公園・鷺池に浮かぶ檜皮葺き(ひわだぶき)、八角堂形式(六角形)のお堂です。
水面に写る姿が美しく、水辺の憩いの場となっています。」(上に同じ)
写真左側の石段を降りていくと、浮見堂に行ける。桜の季節には、桜の木はさらに多いので、いちだんと美しくなる。


円窓亭(丸窓亭)、梅林の中にある。
「もと春日大社経庫を改造したもの(鎌倉時代)。・・・奈良公園の早春の装いはまずこのあたりの清楚な梅の香りから始まる。」という。
落ち着いた円窓亭の佇まいが、華やかな梅の木々をいっそう引き立ててくれる。


最後にもう一度全景を。
ほぼ毎年この梅林を訪れるが、梅林の大きさや、木の本数にはそれほど大きな変化は無いように思う。
観光客も確実に増えているので、奈良公園のもうひとつの中心として、この梅林の木をもう少し増やしてくれればと、いつ来ても思う。

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2019年1月23日水曜日

Alibaba、HuaweiからJHICCまで:中国企業の最新動向

謹賀新年(2019年)
米中経済・企業間対立は、いちだんと厳しくなっている。中国の国家情報法は「いかなる組織及び個人も、法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有し、国は、情報活動に協力した組織及び個人を保護する」ことを明確に定めた。
これに対して、アメリカの国防権限法で特定の中国企業の製品の使用と調達を禁止した。今後、米中間の貿易赤字の削減では、両国で一定の妥協が図られるだろうが、以上の課題での対立はいちだんと厳しくなるだろう。

私は、2018年7月から2019年1月まで、この課題で注目される中国企業について詳しく検討した4つの論文を、私のWebsiteで発表した。以下では、これらをまとめて、「Alibaba、HuaweiからJHICCまで:中国企業の最新動向」として掲載した。ぜひともご検討ください。論文
1)ZTEとHUAWEIの事業活動とその脅威(最新中国企業分析(2))
2)Hikvision、DahuaとHytera:Huawei、ZTEとともに米による調達禁止の3社(最新中国企業分析(3))
3)強力な政府支援で急成長する中国半導体企業5社:先行するSMIC、Huahong Group、急追するYMTC、INNOTRON、JHICC(最新中国企業分析(4))
4)『中国株二季報』でみる中国企業50社(最新中国企業分析(1)) 

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