2020年2月12日水曜日

カラヴァッジョとその幅広い影響 宮下規久朗氏の3つの著作

前回のブログは、カラヴァッジョ展に出展されている「法悦のマグダラのマリア」の真贋論争を紹介した。カラヴァッジョは若くして死んだにも関わらず、その作品はどれも革新的だが、同時に彼の個性とともに作品も、人によって好みが分かれるものが多いように思われる。
カラヴァッジョを理解するための解説書は、私の様な素人には、なんと言っても宮下規久朗『もっと知りたいカラヴァッジョ』(東京美術、2009年)が一番だろう。
私が特に興味を持った2つの作品を紹介したい。まず、この著作の表紙を飾っている「ロレートの聖母」(1603-06年)である。

「この絵では、口レートの聖家に巡礼に来た親子の前に
聖母が顕現した情景をとらえている。巡礼者の男は汚い足の裏を見せ、きわめて現実的だが、聖母子の姿は神々しく神秘的である。」(p.53)

この絵が与えるメッセージはとてもわかりやすい。聖母も巡礼者も細部まで非常に丁寧に描かれている。カラヴァッジョの作品によく登場する、斬首などの残酷な場面や、やや大げさな動作も無く、静かに描かれている。改めて感じたのは、左上の方から光が当たり、巡礼者の顔もよく見えるが、実は意外に画面が闇の中にあることだ。

もうひとつは、カラヴァッジョ最晩年の作品「聖ウルスラの殉教」(1609年)である。
「巡礼の途上、ケルンで千人の乙女とともにフン族の手によって殉教したウルスラ。・・・闇が人物を蝕み、静寂が支配するこの画面は、カラヴァッジョの晩年様式の極致を示す。」(p.85)

この作品の闇は、これまでと比べますます深く濃くなっている。ウルスラを始め人々の顔の一部にしか光が当たらず、表情は十分にはわからない。人々はほぼ一列に並び、動きもほとんど見られない。

なお、カラヴァッジョの作品を味わうには、『もっと知りたいカラヴァッジョ』で十分のように思えるが、さらにと言う方には、Caravaggio: The Complete Works (Bibliotheca Universalis) が役に立つ。515ページと大部だが2,365円と安価、図版も豊富なのはありがたいが、版がやや小さいという難点がある。

カラヴァッジョの影響について、宮下氏は「フェルメールの光とラ・トゥールの焔 「闇」の西洋絵画史」 (小学館101ビジュアル新書、2011年)」で詳しく論じておられる。
「西洋絵画は中世の終わりごろから一貫して光と閣の対比の効果を追求してきた。ルネサンス以降、夜景表現が確立し、17世紀の初めにはカラヴァッジョが光と陰の対立を心理的な劇に応用した。ごの様式が瞬く間にヨーロッパ中に広がり、フランスのラ・トゥールをはじめとして、多くの画家たちが強烈な明暗対比による夜景画を好んで描くようになったのである」(p.10)

画像は、そのラ・トゥールの代表作「大工の聖ヨセフ」(1642年頃)である。画像は、「週刊 西洋絵画の巨匠 33 ラ・トゥール 」(2009年)を利用させていただいた。同書によれば、「本作で描かれるのは、夜働く養父ヨセフの手もとを、ろうそくの炎で照らす少年時代のキリスト」(p.5)。
画面は闇で覆い尽くされ、ろうそくの小さな炎がキリストがかざす手を通って、全体をわずかに明るく照らしている。小さな焔の表現と絵いっぱいに拡がる効果がとてもすばらしい。

宮下規久朗「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」(岩波書店、2016年)は、日本の美術史にも闇を求め、そのひとつの代表作として、北斎の娘、葛飾応為の「吉原格子先之図」と「夜桜美人図」を挙げる。
宮下氏は、こう書いておられる。「葛飾応為の《吉原格子先図》は、中でも人工光線による夜景を描いた稀有な例である。」(p.179)

私のブログ「葛飾応為初の作品集『北斎娘・応為栄女集』」 (2016.2.19)は、以上の様な背景を十分に理解しないままこの作品を紹介した。宮下氏の言われる、美術における闇の位置と役割を念頭に置くと、この作品の、特に日本での意義が改めて深く理解できるように思われる。

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2020年2月8日土曜日

カラヴァッジョ 3つのマグダラのマリア

左の図は、現在あべのハルカス美術館で開催されている「カラヴァッジョ展」の最も注目されている作品「法悦のマグダラのマリア」(1606年)の部分図である。展覧会の図録p.125から掲載させていただいた。(コピーのため、左に折り目による白い線が入っている)

展覧会の図録は233ページ、縦28cm、横22.5cmで、カラヴァッジョの作品13点と、同時代の個性派画家、カラヴァッジョに影響を受けたカラヴァジェスキの作品30点と、詳しい解説を掲載している。こうして同書は、カラヴァッジョを理解する重要な書籍になっていると思われる。

ところで、多数のカラヴァッジョ研究を発表されている宮下規久朗氏は、『もっと知りたいカラヴァッジョ』(東京美術、2009年、2017年に第6刷)で、この作品について次の様に解説している。「聖女は顔を上げ、法悦のような表情をしているが、これは法悦というより悔悛の場面である。聖女の頬には涙の粒がいくつも光っている。17世紀に、神と人との合ーを示す法悦というテーマが流行するが、それに従ってマグダラのマリアも次第に法悦の姿で表されるようになる。カラヴァッジョの作品はその嚆矢となった。」(p.61)

この作品には多数のコピーが存在し、真贋を巡って論争があるが、以下で少し紹介しておきたい。真贋論争を通じて、カラヴァッジョがめざしていたもの、制作途上での様々な構想や工夫が理解できるのではないだろうか。

まず、展覧会の図録の解説者(TK, 木村太郎)氏は、次のように解説している。「(この展覧会に展示された)本作品(左下の図:新保)は、2014年10月24日付の「ラ・レプッブリカJ紙上のインタビューを通じてM・グレゴーリがカラヴァッジョの真筆として公表し、2016年に東京の国立西洋美術館で開かれた「カラヴァッジョ」展で初公開された作品である(グレゴーリ2016)。」(p.122)

これに対して、宮下氏は『もっと知りたいカラヴァッジョ』でもうひとつの作品を紹介し、次のように述べている。「<マグダラのマリアの法悦>には多数のコピーが現存し、「マッダレーナ・クライン」とよばれる上(右下:新保)の作品は、最も出来のよいものである。しかし、作品の質から判断して、原作ではないかもしれない。」

展覧会図録の解説者木村氏は、「(展覧会の)本作品とクライン作品(右下)の図柄には細部に相違点がある。聖女は後者より前者のほうがわずかに若い・・・前者の画面右下に見える頭蓋骨は、後者では排されている。前者の画面左上に捕かれた、茨の冠をともなう十字架や洞窟の入り口も後者では確認できない。」(p.122)
なお、2つの図の色合いあるいは光の強さなどが異なるのは、2つの作品によるものか、書籍に掲載された時に生じたものかは残念ながらわからない。

なお、展覧会の作品のX線写真(左最下段)と、宮下氏が「原作である可能性が最も高い」(p.61)と紹介した、ロベルト・ロンギが公表した白黒写真の作品も右最下段に掲載した。ロンギの作品はクライン作品と近似していて、展覧会の作品とは構図などでかなり異なっている。

クライン作品
展覧会の作品


ロンギが公表した作品(白黒)
展覧会の作品のX線写真


















さて今後、この作品は現代の科学技術を用いてあらゆる角度から調査され、どれがカラヴァッジョの作品なのか徐々に明らかにされるだろうが、とても興味深い。

次の私のブログでは、カラヴァッジョの他のいくつかの作品を紹介し、彼が後世に与えた影響などを考えて見たい。

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2019年12月29日日曜日

富山県水墨美術館開館20周年記念「墨画×革命 戦後日本画の新たな地平」

図録表紙
富山県水墨美術館開館20周年記念「墨画×革命 戦後日本画の新たな地平」が、2019年11月15日から2020年1月13日)まで開かれている。
「本展では、戦後に制作された墨画的表現を概観し、戦後日本画の中での墨画の性格、水墨画の伝統の受容/変容の状況を、さまざまなアプローチを見せた画家たちの群像により紹介します。」というのが展覧会の目的である。

残念ながら私は行けなかったが、すばらしい作品が多いので、購入した図録で紹介したい。この図録は、小さいながら、3枚見開きが高山辰雄、平川敏夫、下保昭、2枚見開きが横山操、小泉淳、加山又造の各氏の作品で掲載されているので、小ささを感じず十分に楽しむことができる。 

非常に興味深い墨画が多数集められているが、私が特に強く引かれたのは、平川敏夫氏(1924-2006)の次の作品である。それぞれの画像をクリックして、ぜひ拡大して見ていただきたいと思います。
平川敏夫「雪后閑庭」、1985/1990年 豊橋市美術博物館
図全体
所有者の豐橋市美術博物館によれば、「この作品は、昭和60年に右半双を発表したのち、平成2年の平川敏夫展(豊橋市美術博物館)に出品するため、左半双を描いて四曲一双屏風として5年越しで完成しました。」このような事情からか、縦が左右で少し異なるようである。このブログの図は図録を元に作成しているので、厳密には原作の図とやや異なっている。

左半双
何よりも、この光り輝く強い白色をどのようにして生み出したのかを知りたくなる。図録は次のように説明している。
右半双
「白く描きたい(残したい)部分に水溶性ゴムでマスキングをほどこし、その上に墨で描き、乾いた後にはがし取る方法である。従来の水墨画とは異なる方法で、新しい墨の表現を追求し、幽玄な世界を創り上げていった。」(66)

静まりかえった池の周辺で、前面に深く積もった雪が強く輝き、背後の木々が幹と枝を大きく広げている。枝に降り積もった雪か、舞っている粉雪が木々を覆っている。
白と黒の2つの色とそのコントラストだけで、これほど豊かな自然の生命力を繊細に描き出すことができるとは、本当に驚きである。

加山又造「一九八四・東京」、1984年、東京国立近代美術館
展覧会のもうひとつの作品も紹介しよう。加山又造氏のよく知られた作品である。
平川氏と同じような構想ではあるが、対象はビルが建ち並ぶ大都会の東京。「雪后閑庭」と同じように、辺り一帯に雪が降り積もり静まりかえっている。

加山又造「月光波濤」、1979年
今回の展覧会に展示された作品ではないが、あわせて掲げておきたいのは、加山又造氏のこの代表作である。
上の静まりかえった東京とは対照的に、左半双では高い岩にあたって激しく砕け散る波と水面が、月の光を受けて輝き、右半双にはそれを遠くから眺めるような満月、黒を背景にして白という色のみで、躍動する自然の一瞬が描かれている。

加山氏は、自らの手法を次のように説明している。「和紙に胡粉の上澄みを数度引き、エアガン、バイプレーター噴霧機、染色的手法、数種類の明墨の併用、と、現在自由に出来るあらゆる手法技術をぶち込んでみた。」(NIKKEI POCKET GALLERY「加山又造」、作品33の解説)

本ブログで紹介した展覧会「墨画×革命 戦後日本画の新たな地平」は残念ながらもうすぐ終了だが、図録や関連する墨画で、多くの方が墨画への関心が高められるよう願いたい。

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2019年12月6日金曜日

緑ヶ丘美術館 三代 徳田八十吉展

展覧会の案内 おもて
2019年の最後を飾るすばらしい展覧会に行くことができた。

生駒市の緑ヶ丘美術館で、(2019年)9⽉8⽇から12⽉22⽇まで<没後10年>⼈間国宝・三代德⽥⼋⼗吉展が開かれている。緑ヶ丘美術館・開館二周年を記念して開かれたということである。

展覧会では、以下の3つめの画像が示すように、⼈間国宝・三代德⽥⼋⼗吉の多数の作品が展示されている。
生駒市は人口が12万、大阪のベッドタウンとしては便利ではあるが比較的小さな都市で、このようなすばらしい展覧会が開かれるなんて本当に驚きである。

展覧会の案内 うら

「三代徳田⼋⼗吉⽒は、初代⼋⼗吉⽒を祖⽗に、⼆代が⽗という九⾕焼名⾨の家に育ち、⼦供の頃から伝統的な九⾕五彩の⾊絵に囲まれて育ってきました。・・・
時を経て、先代と違う独⾃の表現に⽬覚め、⾊と技法の研究から、ついに「彩釉」(さいゆう)を発案。絵ではない⾊釉の新しい表現を編み出しました。絵付け表現の九⾕焼に全く新しい⾊だけで表現する九⾕焼が発現しました。⽣前、三代⼋⼗吉⽒が「耀彩」(ようさい)と命名した作品が、その完成形です。
⼤胆なグラデーション、オーロラのような光、透き通る「⾊」の宇宙。類稀な情熱が⽣んだ光り輝く「耀彩」の世界。」(美術館Websiteから)

ずっと以前に、私も九谷を訪れ、お土産に九谷焼の絵付けされた湯飲みを買ったことがあった。三代徳田⼋⼗吉の作品はそれとは全く異なっているので、実際に見るのをとても楽しみにしていたが、やはり実物をみてあまりの美しさに圧倒されてしまった。

以下は、展覧された作品の一覧である。主な作品名を示しておこう。
左ページの左上の作品は、会場の入ってすぐの位置にある代表的な作品「耀三彩遊線文壺」、左ページ右上は「碧明耀彩花器」、左ページ3段目右は「彩釉鉢「輪華」」。
右ページ右の上段中央は「耀彩壺」、右ページ右上は「耀彩大皿「月輪」」中段右は「碧明耀彩曲文壺」である。
以上の代表的な6作品は、いずれも以下で紹介する美術館のカレンダーに掲載されている。

作品一覧、展覧会パンフレットから

















展覧会パンフレット・表紙

以上の作品群はどのようにして創造されたのか?展覧会パンフレットには次のように書かれている。

「通常の九谷焼の工程では、素地を成形し、素焼して施釉のあとに本焼き、それに呉須(下絵の染付)で絵柄の輪郭を描き、その上に厚く絵の具を乗せて、約800度で焼成します。
 しかし、三代八十吉は、絵付け焼成を約1050度という高温で行います。これは、より高温で焼き、ガラス化した釉の中に色彩、輝きを閉じ込めるため。そうして生まれたのが「耀彩(ようさい)」という独特の世界なのです。」(6ページ)
次年度カレンダー

こうしてできあがった三代徳田⼋⼗吉氏の世界を、ぜひ美術館に行かれて、作品にぐっと近づいてご覧いただきたいと思う。日本の中で連綿と受け継がれるブルー:青の世界が、三代徳田⼋⼗吉氏によって、また新たに切り開かれたのを見ることができる。

ちなみに、入場は無料、展覧会パンフレット、右のカレンダーも無料でいただける。まず、作品についての10分ほどのビデオも見ることができる。
さらに、同時にやはり人間国宝の陶芸家藤本能道氏、島岡達三氏の生誕100年記念特別展示まである。
遠くから来ていただいても十分に満足していただける内容だと思います。

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2019年11月18日月曜日

書評:李栄薫編著『反日種族主義』その1(2)

(1)での『反日種族主義』の紹介に続いて、李栄薫氏による「反日種族主義」の説明に進もう。
なお、私はすでに私のWebsiteで書評を掲載している(本文10ページ)ので、詳しくは左をクリックしてお読みください。

李栄薫氏、Share News Japanから
「プロローグ 嘘の国」で、李栄薫氏は次のように述べている。長くなるが本書の論点を適切にまとめているので、全文を掲載する。
「この本で争点に挙げるいくつかを列挙します。朝鮮総督府が土地調査事業を通し全国の土地の四〇パーセントを国有地として奪った、という教科書の記述は、でたらめな作り話でした。植民地朝鮮の米を日本が収奪した、という教科書の主張は、無知の所産でした。日帝が戦時期に朝鮮人を労務者として動員し奴隷にした、という主張は、悪意の捏造でした。嘘の行進は日本軍慰安婦問題に至り絶頂に達しました。憲兵と警察が道行く処女を拉致したり、洗濯場の女たちを連行し、慰安所に引っ張って行った、という韓国人一般が持っている通念は、ただの一件もその事例が確認されていない、真っ赤な嘘を土台としたものでした。」(18-19、以下数字は同書ページ数)

では、なぜ日本の統治がもたらした結果について、次々と嘘が生み出されたのかについて説明したのが、「反日種族主義」というイデオロギーなのである。これまで、韓国の反日思想を、すでに紹介したように民族主義とみなす場合が多かったが、李栄薫氏は一歩進めて反日種族主義だと考えている。
「韓国の民族主義は、西洋で勃興した民族主義とは別のものです。韓国の民族主義には、自由で独立的な個人という概念がありません。韓国の民族はそれ自体で一つの集団であり、一つの権威であり、一つの身分です。そのため、むしろ種族と言ったほうが適切です。隣の日本を永遠の仇と捉える敵対感情です。ありとあらゆる嘘が作られ広がるのは、このような集団心性に因るものです。すなわち反日種族主義です。」(24)

韓国において民族的な利益や尊厳とみなされるものが最優先され、それを批判すれば徹底的に批判・弾圧される、異なった立場や見解が認められないという事態はしばしば起こっている。後にも触れるような同書著者に対する曹国(チョ・グク)氏による批判や、著者達に向けられた暴行事件、韓国人として慰安婦について論じた朴裕河『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』が裁判にかけられるなど、学問的な検討や論議がまともに行われず、政治的に断罪される異常な事態が、以前からしばしば見られる。

李栄薫氏による反日種族主義の検討は、「第17章 反日種族主義の神学」でさらに進められる。氏は、アンドレ・シュミット『帝国のはざまでー朝鮮近代とナショナリズム』(2007年)に依拠して次のように指摘する。「一言で言えば、朝鮮における民族は、親族の拡大形態として受容され、定着しました。」(207)「民族の歴史に対する叙述は、広大な族譜の形式をとるようになりました。シュミットは、韓国人が民族と親族を共通のものとして捉えたのには、地に気脈が流れるという風水地理説が作用した、と指摘しています。」(207)

親族という比較的小規模な血縁関係で結びついた関係が、そのまま多様な特徴を持つはずの民族という集団にまで拡大され、親族の秩序と権威が保たれつつ、構成員にひとつの集団として行動することが求められる。韓国における支配的な思想が、以上のような特徴を持つ反日種族主義であると李栄薫氏は主張している。この新たな特徴付けは、従来の民族主義批判を大胆に一歩進めたとらえ方で、現在の韓国での支配的な思想の特徴を適切に表現していると言えるだろう。

『反日種族主義』の出版に際して、文在寅政権を支えた前法務部長官の曹国(チョ・グク)氏は、「今(8)月5日、自身のフェイスブックでこの本の著者について「附逆(反民族的)・売国親日派という呼称以外に何と呼ぶべきか、私には分からない」と批判した。
ソウル大学教授で、かつ当時は法務部長官候補者であるにもかかわらず、同書の内容について学術的で具体的な批判をいっさい行わず、反民族的・親日的という批判を行うことは、彼が「反日種族主義」であることを如実に示している。
文在寅政権の中心的な人物のこのような批判や、日本製品のボイコットなど、すでに日本を含む先進国では過去の遺物となったものが、韓国では未だに堂々とまかり通っているのは、本当に驚きである。韓国の有力企業がグローバルな企業として世界をリードしているにも関わらず、同時にアナクロニズムが政権を支配しているのである。

こうした事態を前にして、李栄薫編著『反日種族主義』が刊行されたのは、本当に時宜を得た試みとなっている。同書が、韓国と日本両方の多くの人々が読まれることを期待したい。そして、私は、これを契機にして、この著者達の韓国語の専門的な研究が日本語や英語に翻訳され、読まれることを特に希望したい。そして、韓国と日本さらにはアメリカの研究者の学術的な交流が、さらに多くの分野に広がり、それぞれの研究がいちだんと深まることを期待したい。

あわせて以下の私のブログもお読みください。
李榮薫他『反日種族主義』と朱益鍾『大軍の斥候』(1)(2019.9.17)
李榮薫他『反日種族主義』と朱益鍾『大軍の斥候』(2)(2019.9.17)

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書評:李栄薫編著『反日種族主義』その1 落星垈経済研究所の経済学者などによる批判


Amazonから
李栄薫編著『反日種族主義 日韓危機の根源』が刊行された。韓国で刊行された書籍の日本語版である。韓国ではベストセラーになったが、日本語版の刊行は、わずか4か月後である。同書は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権を支える思想と思想家に対する包括的な批判に取り組んでいる。
私はすでに私のWebsiteで書評を掲載している(本文10ページ)ので、上をクリックしてお読みください。このブログは短いので、ぜひあわせて参照していただければ幸いです。


イ・ヨンフン氏はじめ6名の著者、池上彰SP、2020.2.2 
(2020.2.3追補)
目次は以下の通りである。目次の後ろには6名の執筆者を記載している。
日本語版序文、はじめに
プロローグ 嘘の国 李栄薫(イ・ヨンフン)
第1部 種族主義の記憶
1 荒唐無稽『アリラン』 李栄薫、2 片手にピストルを、もう片方に測量器を 李栄薫、
3 食糧を収奪したって? 金洛年(キム・ナクニョン)、4 日本の植民地支配の方式 金洛年、5 「強制動員」の神話 李宇衍(イ・ウヨン)、6 果たして「強制労働」「奴隷労働」だったのか? 李宇衍、7 朝鮮人の賃金差別の虚構性 李宇衍、8 陸軍特別志願兵、彼らは誰なのか! 鄭安基(チョン・アンギ)、9 もともと請求するものなどなかった――請求権協定の真実 朱益鐘(チュ・イクチョン)、10 厚顔無恥で愚かな韓日会談決死反対 朱益鐘
第2部 種族主義の象徴と幻想
11 白頭山神話の内幕 李栄薫、12 独島、反日種族主義の最高象徴 李栄薫、13 鉄杭神話の真実 金容三、14 旧総督府庁舎の解体――大韓民国の歴史を消す 金容三(キム・ヨンサム)、15 親日清算という詐欺劇 朱益鐘、16 ネバー・エンディング・ストーリー 「賠償!賠償!賠償!」 朱益鐘、17 反日種族主義の神学 李栄薫
第3部 種族主義の牙城、慰安婦
18 我々の中の慰安婦 李栄薫、19 公娼制の成立と文化 李栄薫、20 日本軍慰安婦問題の真実 李栄薫、21 解放後の四十余年間、慰安婦問題は存在しなかった 朱益鐘、22 韓日関係が破綻するまでー挺対協の活動 朱益鐘、エピローグ 反日種族主義の報い 李栄薫
解説 「反日種族主義」が問いかける憂国 久保田るり子
著者プロフィール

著者の主なプロフィール、スペースの都合で書評掲載文よりさらに簡略化した。
李栄薫(イ・ヨンフン)ソウル大において博士学位を受ける。ソウル大経済学部教授退職後は、李承晩学堂の校長。 『韓国の「国史」教科書を書き換えよ 大韓民国の物語』(文藝春秋、2009年刊)などの著書がある。
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金洛年(キム・ナクニョン)東京大において日帝下韓国経済史研究で博士学位を受ける。現在、東国大経済学科教授、落星垈経済研究所所長。『植民地期朝鮮の国民経済計算1910-1945』(東京大学出版会、2008年刊)、『日本帝国主義下の朝鮮経済』(東京大学出版会、2002年刊)などの編著・著書がある。
金容三(キム・ヨンサム)朝鮮日報社の『月刊朝鮮』記者となり、現代史を担当。現在、ペン&マイクの記者、李承晩学堂教師。
朱益鍾(チュ・イクチョン)ソウル大において博士学位を受ける。ハーバード大訪問学者と大韓民国歴史博物館学芸研究室長を経て、現在、李承晩学堂教師。『大軍の斥候 韓国経済発展の起源』(日本語翻訳、日本経済評論社、2011年)などの著訳書がある。
鄭安基(チョン・アンギ)京都大において日本経済史研究で博士学位を受ける。学位論文は、「戦前戦時「鐘紡コンツェルン」の研究」(2000年)である。現在、東亜大東アジア研究院特別研究員。
李宇衍(イ・ウヨン)成均館大で博士学位を受ける。ハーバード大訪問研究員、九州大客員教授を歴任。現在、落星垈経済研究所研究委員。「戦時期日本へ労務動員された朝鮮人鉱夫(石炭、金属)の賃金と民族間の格差」(『エネルギー史研究』No.32、九州大学記録資料館産業経済資料部門、2017年)などの論著がある。
以上のプロフィールからわかる重要なことは、ジャーナリストの金容三氏を除く5名の著者は、実証主義的な方法を基礎にする経済史を中心とする経済学者達であるということである。

ここで、著者を含む韓国における、事実を着実に検証する研究者のあゆみを簡単に振り返っておきたい。なお、著者全員が同じ動きをしているではないことは言うまでもない。
1987年に安秉直氏 と李大根氏の二人によって落星臺(落星垈、落星台)硏究室が開設された。その活動の進展とともに、1994年に社團法人落星臺經濟(経済)硏究所 (Naksungdae Institute of Economic Research)と改名された。
2005年には、教科書フォーラムが発足した。教科書は若い世代の思想形成に重要な役割を果たすため、従来の教科書に大幅な改訂を求める必要があると、フォーラムに結集する人々は考えていた。フォーラムの代表者の一人が、ソウル大の李榮薫教授(経済学)で、そのほか顧問に、東京大学でも教鞭をとったソウル大の安秉直(アン・ビョンジク)名誉教授がいる。このフォーラムによって、『代案教科書 韓国近現代史』が2008年に刊行された。
その後、研究所の持続的な活動などとともに、李承晩学堂や李承晩TVなどの開設などもあり、そのまとめのひとつとして本書が刊行されたと思われる。

『反日種族主義』の主な内容紹介は、(2)に続く。

2019年10月15日火曜日

格安スマホも3代目:Asus Zenfone 6を購入

Asus Zenfone 6
格安スマホは以下の様な経緯でついに3代目となり、Asus Zenfone 6を購入した。
1代目:2014年4月に購入し、特に大きな問題なく使っていたスマートフォンAsus Fonepad Note 6が、2016年10月に突然起動しなくなった。使用期間は2年半、結局原因不明のまま。
 詳しくは、スマートフォンが突然起動不能に、その経緯と必要な対策 (2016.10.20)
2代目:やむを得ずAsus Zenfone Maxを購入、2019年9月まで使い続けてきたが、しだいに動きの悪さ、性能不足に陥り、様々な手を尽くしたが、主要なアプリが自由に使えなくなる。使用期間は少し延びて約3年。
3代目:こうしてやむをえず新しい機種に乗り換えることにしたが、格安スマホの選択肢が小さくなっていると感じる。ファーウェイや中国製が抱える情報漏洩問題を考えると、適当な価格ではAsus以外に選択肢無しと言うことで、最新モデルでこれまでよりもかなり高価なAsus Zenfone 6を購入した。OCN モバイルから購入したので、現在(2019.10.15)の価格56,900円(5,000円の割引価格を含まない)より少し安かった。

手続きは簡単だった。
1 MNP予約番号の取得:MNP予約番号電話番号そのままで他社から乗り換えの場合のみ、利用期間が決められているので、素早い手続きが求められる。
2 本人確認書類と支払のためのクレジットカードが必要。

Asus Zenfone 6の特徴を以下にまとめた。
NTT Communications Corporationデータを抜粋
・メインメモリと内蔵ストレージは十分、気持ちよく動作してくれる。
・ディスプレイは6.4インチだが、画面いっぱいに配置されているので、本体サイズは前の機種のAsus Zenfone Maxよりも小さい。
・バッテリー容量が大きく確かに駆動時間は長いが、今のところその大きさの実感はそれほど感じない。私の使い方などに改善の余地があるかもしれない。
・この機種の最大の特色のひとつは、通常時は背面側に収納されたカメラが、インカメラとして使うときにぐるりと回転し、前面に現れる「フリップカメラ」である。カメラの性能は十分なので、これから使い慣れてみたい。

最後に、使用開始にあたっての問題をいくつか指摘ししたい。
右の画像は、左がマニュアル、右下がSIMカード、右上がSIMカードをスマホ本体に挿入する器具(スマホに付属)である。
問題は、
・Asusが提供する説明書があまりにも簡単過ぎること、web上で詳しいpdf版が欲しい。
・通信会社から提供されるSIMの取り出しがかなり難しい、中央の上の空の部分にこのスマホに使うnanoSIMが入っていた。簡単でも良いので、傷つけないように取り出しができる簡単な説明書は付けて欲しい。

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