2017年8月8日火曜日

渡辺惣樹『誰が第二次世界大戦を起こしたのか』、『フーバー大統領回顧録』紹介(2)

書評「フーバー大統領回顧録『裏切られた自由』を読む:日本にかんする叙述を中心にして(Book Review: Hoovers’ FREEDOM BETRAYED, Focusing on Chapters Related with Japan)」を、私のホームページに掲載しました。
書評は、書評「フーバー大統領回顧録『裏切られた自由』を読む:日本にかんする叙述を中心にして 論文クリック)していただいても見られます。
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『裏切られた自由(フーバー大統領回顧録)』(Freedom Betrayed)を紹介した第2の書籍は、『裏切られた自由』の翻訳者である渡辺惣樹氏の『誰が第二次世界大戦を起こしたのか: フーバー大統領『裏切られた自由』を読み解く』(2017年7月刊)である。同書は基本的に『裏切られた自由』の順序に沿って論じている。

目次は次の通り。
一章 ハーバート・フーバーの生い立ち、
二章 『裏切られた自由」を読み解く その一:共産主義の拡散とヨーロッパ大陸の情勢、
三章 『裏切られた自由』を読み解く その二:チェンバレンの「世紀の過ち」とルーズベルトの干渉、
四章 『裏切られた自由」を読み解く その三:ルーズベルトの戦争準備、
五章 連合国首脳は何を協議したのか

以下では、主にフーバー大統領の重要な主張を、章の順序にそって紹介していきたい。この書で、渡辺氏は『裏切られた自由』を詳しく紹介するとともに、ハミルトン・フィッシュの『ルーズベルトの開戦責任』などの関連する重要な文献を紹介している。これらにも注目していただきたい。

二章 
フーバーの基本的な立場
「(ナチス体制を嫌うアメリカ国民は、民主主義国に同情するだろうが)アメリカはヨーロッパの問題を解決できないことを肝に銘ずるべきだ。我が国ができることは、あくまで局外にいて、アメリカの活力と軍事力を温存することである。その力を必ずや訪れるはずの和平の時期に使うべきである。それこそが我が国の世界への貢献のあり方である」(W:44, 107, H:Editor's Introduction:xxxii, 邦訳:上43Wは渡辺氏の著作でのページ数、Hは”Freedom Betrayed”でのページ数、以下同じ、邦訳ページは後日追記、以下同様)
フーバーは、ルーズベルトの失敗の始まりは共産国家ソビエトの承認であったとしている。この政策の採用には、大統領の周辺と政府組織に入った多くの共産主義者やその同調者が大きな影響を与えているという。

四章
武器貸与法と戦争準備
この法律(武器貸与法、1941年3月)で大統領は開戦権限まで持つことになり、議会は追認するだけの機関になり下がる。このままでは我が国そのものが国家社会主義国家に変貌し、ルーズベルト自身が独裁者となる。」(W:120, H:Editor's Introduction:l, 邦訳:上68)
この法律によって、アメリカはソ連に対しイギリスに次ぐ額の武器を支援した。
「国民も議会も我が国の参戦に強く反対であった。したがって大勢をひっくり返して参戦を可能にするのは、ドイツあるいは日本による我が国に対する明白な反米行為(some overt act against us)だけであった。ワシントンの政権上層部にも同じように考える者がいた。彼らは事態をその方向に進めようとした。つまり我が国を攻撃させるように仕向けることを狙ったのである。」(W:129, H:247, 邦訳:上450)こうして、着々と日独に対する戦争の準備が進められた。

日米開戦への最終局面での交渉と、フーバーの和平への期待
駐日大使グルーの本省宛ての報告書を、フーバーは詳しく紹介している。「(近衛首相は)現今の日本の国内情勢を鑑みれば、大統領との会談を一刻の遅滞もなく、できるだけ早い時期に実現したいと考えています。近衛首相は、両国間のすべての懸案は、その会談で両者が満足できる処理が可能になるとの強い信念を持っています。」(W:139, H:271, 邦訳:上480)
結局ルーズベルトは会談に応じず、近衛首相は失脚した。
近衛の失脚は二十世紀最大の悲劇の一つとなった。彼が日本の軍国主義者の動きを何とか牽制しようとしていたことは賞賛に値する。彼は何とか和平を実現したいと願い、そのためには自身の命を犠牲にすることも厭わなかったのである。」(W:143, H:277, 邦訳:上487)

五章
ヤルタ会談と秘密協定、原爆投下について、ルーズベルト批判
フーバーは、ニューヨーク・ワールド・テレグラフ紙を引用した。「合衆国はジャップとの戦いに参加させるために、ロシアを賄賂(領土上の不当な要求:新保補足)で釣るようなことをしてしまった。まったく不要なことであった。こんな意味のない賄賂が、これまでにあっただろうか」(W:201, H:693, 邦訳:下311)
この賄賂がロシアの軍事的進出を促し、今なお日本を苦しめている。
「アメリカ人の多くが、この発表がポツダム会談の三カ月前になされていれば、数千のアメリカ兵の命が救われていたと思っている。また数千もの女性や子供あるいは民間人を殺戮した爆弾も投下されなかったと考えるのである。」(W:212, H:565, 邦訳:下151)
前のブログで紹介した、藤井厳喜他『日米戦争を起こしたのは誰か』が紹介したように、フーバーは別の箇所で原爆の投下に明確に反対している。

なお、"Freedom Betrayed"のDOCUMENT 18 "A Review of Lost Statesmanship--19 Times in 7 Years” 1953, pp.875-883, 邦訳:下529-539については渡辺氏の著作では取り上げられていない。藤井厳喜他と以下の私のブログを参照していただきたい。

<関連するブログ>
第2次世界大戦を見直す大著『裏切られた自由(フーバー大統領回顧録)』邦訳刊行迫る (2017.8.6)
藤井厳喜他『日米戦争を起こしたのは誰か』、『フーバー大統領回顧録』紹介(1) (2017.8.7)

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