2017年9月17日日曜日

「並河靖之 七宝展 明治七宝の誘惑-透明な黒の感性」(伊丹市立美術館)

伊丹市立美術館で9月9日から「並河靖之 七宝展 明治七宝の誘惑-透明な黒の感性」が開催されている。展覧会では、以下の大部の図録が販売され、これによって並河靖之の作品群全体がよく理解でき、展覧会の魅力がいちだんとわかりやすくなっている。

なお、並河靖之自身といくつかの主要作品については、以前の私のブログ「日本の工芸:七宝、並河靖之、Shippo, Yasuyuki Namikawa」をあわせてご参照ください。

左図は図録の表紙である。
「本図録は、平成29年1月14日から12月25日まで、東京都庭園美術館、伊丹市立美術館、パラミタミュージアムで開催される「並河靖之七宝」展の共通図録である。」
そのため、248ページからなり、多数の鮮明な画像とともに、詳しい論説や説明が掲載されており、並河靖之の一連の作品を理解するために必須の書籍になっていると思われる。

図録と共に、作品の画像が掲載されている多数の葉書等が販売されているが、右はそのうちの1枚「藤草花文花瓶」である。花瓶の正面と上部から撮った写真が上下に掲載され、作品の細部がよく理解できる、すばらしい1枚となっている。花瓶は明治後期の作品で、図録には38番として掲載されている。

並河靖之の代表的な作品として取り上げられる「四季花鳥図花瓶 」は、図録では正面と左図の背面、そしてそれぞれの詳細画像が掲載されている。その超絶技巧には改めて驚かされる。

この作品は、1899年に完成し、現在宮内庁三の丸尚蔵館に所蔵されている。(正面画像は、上記私のブログを参照してください)




並河靖之のもうひとつの代表作が、今回出品された「桜蝶図平皿」(明治中期の作品、図録では33番、やはり、実物画像は上記の私のブログをご参照ください)である。
 「桜蝶図平皿」の背景は緑色であるが、同じような構図で、背景がピンク色になっているのが、右の「桜蝶文皿」(『七宝』INAXギャラリーより)である。どちらも桜が周りに一面に咲き誇り、中央には羽根をいっぱいに拡げた蝶が舞っている。

今回の展覧会では、これらを含め、作品の下図が多数公開され、作品の制作過程がよく理解できるようになっていることも特色である。

今回の図録は、「並河七宝のはじまり」「挫折と発展一万国博覧会」「並河工場画部一下図」「明治七宝の系譜」「円熟一文様の先へ」「到達一表現のあくなき追求」の6章からなり、年代順に作品が紹介されている。「並河七宝のはじまり」の初期の作品も注目されるが、最後期の「円熟一文様の先へ」「到達一表現のあくなき追求」での作品の変化もとても興味深い。

「明治22年(1889)のパリ万国博覧会で大きな成功を収めた並河は、同年開催された第三回内国勧業博覧会の報告でも妙技一等賞牌を受賞して評価を得ている。しかし、同時に意匠についての指摘がなされており、出品作について「鳳凰唐草でなければ蝶烏の古風な模様を用いており、画風の変化が乏しいこと」から「技量があるのだから、今後進んで考案を極めるべき」と更なる意匠改良を勧められているのである。」(「円熟一文様の先へ」)

並河はこの評価を受け入れて、晩年に至るまで様々な試みを行っているが、その成果のひとつが左上図の「蝶に竹花図四方花瓶」である。「器体全体に文様を張り巡らせるのではなく余白が生まれ、さらに場面を区切るように設けられていた枠が取り払われ、器体をーつの場面とする・・・」ようになったという。(上に同じ)

ところで、この展覧会を開催された伊丹市立美術館は日本庭園にも接し、また美術館周辺には酒蔵などもあり、展覧会とともに十分に楽しめる。ぜひ見に行かれることをおすすめしたい。

ブログのTOPブログの目次新保博彦のホームページ

0 件のコメント:

コメントを投稿