2022年4月28日木曜日

『ガラス工芸家100人 現代日本の精鋭たち (別冊炎芸術) 』を紹介します

私のブログは、しばらくロシアのウクライナ侵攻を批判する記事を書いてきた。この野蛮な行為で、人間に対する信頼を失いそうになるが、以下のような素晴らしく創造的な作品群に親しむことができて、少しほっとできる。

『ガラス工芸家100人 現代日本の精鋭たち (別冊炎芸術) 』(2021年10月)を紹介したい。

まず、100人の作品の中で、私が最も注目したのは、山本茜さんの「源氏物語シリーズ 第三帖「空蝉」」である。

この作品は、「截金(きりかね)」という技法で作られていると言う。それは、「薄く伸ばした金箔を一定のかたちに切り、繊細な文様を生み出す工芸の伝統技法で、古くから仏像や仏画に用いられてきた。その截金を透明なガラスの中に浮遊するかのように封じ込めるのが「截金ガラス」」だという。(Vogueから)この作品を近くに寄って見てみると、細密な文様が、整然と並べられている。その繊細さに本当に驚いてしまう。

この作品は、その名称の通り、「『源氏物語』の奥深い世界観を作品として可視化」したものだと言う。(以下、括弧内の文章は『ガラス工芸家100人』から)

次に、川辺雅規さんの「硝子花器〈衣~koromo~〉」で、「吹きガラスという技法での作品制作」である。
何枚かのガラスを層を成すように重ねているのだろう、その重ねた部分の柔らかな曲線が、確かに衣のように見える。左側の「衣」と右側の「衣」が、それぞれ厚みの異なった曲線を描きながら重ねられている。また、外側の「衣」全体の淡い青色が、全体に優しく花を包み込む雰囲気を醸し出している。

川辺さんは、富山ガラス造形研究所や富山ガラス工房で仕事をされて来られたが、次の小島さんも富山に移り住んでおられるという。富山には、富山市ガラス美術館があり、ガラス工芸が盛んな街である。そればかりか、富山には、以前にこのブログでも紹介した富山県水墨美術館もあり、幅広い芸術活動が盛んな都市である。

最後に、小島有香子さんの「Layers of Light -Moon- #7」である。
「板ガラスを積層して削ることで模様や面の重なりが現れ、光を得てガラスの内に光の層ができ、それは見る方向によって印象が変化する。」
その技法について、富山ガラス作家協会のページでは、小島さんの技法を、「積層・研磨(板ガラスを接着して層にし、研磨によって造形)」とまとめている。
小島さんは、「満月の夜に、水面に映る月とさざ波」と書いているが、月明かりだけの夜に、さざ波が拡がっていくように見える幻想的な作品である。

本書は、100人の作家の作品紹介以外に、「ガラスを知る・見る・買う」として、「日本グラスアートの幕開け」(土田ルリ子(富山市ガラス美術館副館長))、「ガラスの技法」(古澤かおり/中島春香(富山市ガラス美術館学芸員))、「近現代ガラス関連美術館」、「ガラス工房・ギャラリー」のページがある。

100人もの日本を代表するガラス工芸家の作品を一度に見ることができる『ガラス工芸家100人』を、多くの読者にお薦めしたい。なお、Amazonの本書紹介ページでは、上の3人以外の10人の多彩な作品を紹介している。あわせて、ご参照ください。

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