YouTubeチャンネルを開設しました。新保博彦のチャンネルです。以下の内容を含む「北斎の須佐之男命厄神退治之図と晩年の大作群」を作成しました。(2023.5.22)
一つ目は、「朱鍾馗(しゅしょうき)図」、絹本一幅、一八四六年、メトロポリタン美術館。(左は部分図)。
北斎八十七歳の制作である。鍾馗は中国で広く信仰された厄除けの神。鍾馗を朱描きにしているのは、「男児の疱瘡除けに効果のある色とされた」(本書p.8)からだという。同書p.6-7には、34-5歳頃の鍾馗図も掲載されている。
鍾馗の表情は、その朱色とともに、見るものに強烈に迫ってくる。
二つ目と三つ目の図は、「須佐之男命厄神退治図」、板額一面、一八四五年、牛島神社旧蔵(焼失)、(注意:この図は左図、次が右図)
この図は、「須佐之男命が厄神たちに、病や凶事を起こさぬよう誓約書をとっている図である。」(26)
この図は、私のブログの「北斎晩年最大の傑作、須佐之男命厄神退治之図 No.1」でも紹介したように、関東大震災で焼失したが、凸版印刷が墨田区の復元プロジェクトに参加し、当時の彩色された絵馬を原寸大で推定復元した。上記ブログの復元版(カラー画像)と比較参照していただきたい。
本書ほど拡大してみると、中央やや右上の白い装束を着た「須佐之男命」が、朱色と思われる服をまとい、腕には疱瘡の痕が見える疱瘡神、紫と思われる衣をまとった梅毒の厄神、風邪をはやらせる疫病神の風邪の神などと闘おうとしているのがわかる。
この時代に流行した病と闘いは、一つ目の作品と同様だが、北斎晩年の重要なテーマとなっている。
四つ目の作品は、「龍図」と「虎図」である。この二つの作品は、ともに紙本一幅で、一八四九年に制作され、龍図はフランスのギメ東洋美術館に、虎図は太田記念美術館が所蔵していたが、二〇〇六年に対幅であることが判明した。
龍と虎の視線が見事に相対しているので、対幅であることがよくわかる。龍と虎は並び立つ二大強者。天上から姿を現した龍は墨一色で描かれ、対照的に雨中の虎は色彩豊かに描かれている。
本書には、合計75作品とともに、特別付録:読本挿絵の世界、特別付録解説:北斎の読本挿絵と掲載作品の書誌、総論:北斎の閲歴と芸術[壱]も掲載されている。
なお、私のブログで関連する内容は、「疫病と闘い続ける北斎」にもある。あわせてご参照ください。
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