(*著者名Remer, Charles Frederickは、左ではレーマーと記載されているが、後の翻訳ではリーマーが採用されている)
戦間期の日本経済を特徴づけるのに、「日本帝国主義」という用語が、未だに十分な理論的・数量的な裏付け無しに、経済発展に否定的な意味で使用されている。しかし、現在の直接投資による受入国の経済発展に対する積極的な貢献を少しでもとらえられれば、戦間期の日本の対中直接投資が、現代と同様の経済発展の牽引役であったことも理解できるはずである。『列國の對支投資』は、戦間期の世界と日本の対中直接投資を理解するために欠かせない重要な著作である。
目次は以下の通りである。
第一篇 總論-外國の投資及び支那の國際經濟=金融的地位
第一章 緖論 / 1
第二章 支那の人口及び資源 / 9
第三章 傳統的支那 / 26
第四章 現代的經濟關係 / 40
第五章 支那に於ける外國投資の一般的描寫 / 57
第六章 事業投資の槪觀 / 82
第七章 事業投資の意義 / 106
第八章 支那政府の外債 / 120
第九章 外國の投資と國際貸借 / 156
第十章 華僑よりの送金 / 187
第十一章 貿易及び正貨移動 / 202
第十二章 支那の國際貸借 / 221
第十三章 支那の國際的經濟的地位 / 242
第十四章 結論 / 248
第二篇 各國篇(以下の章編成は略)
リーマーは、「財産が外国人の管理及び支配の下にある」(65)投資を、直接投資と定義している。また、上記の表からもわかる通り、「直接投資は、中国における外国投資の主要形態である」(70)とも述べている。
この時期に、直接投資が、世界の新たな時代の新たな重要な投資形態であり、中国においてもそれが主要な形態であることを指摘したことの意味は非常に大きい。
現在では、世界で直接投資が経営資源の移転を伴うため、経済発展に大きな役割を果たすことができるので、投資国だけでなく受入国も競って発展させようとしているのは周知の事実である。
さらにリーマーの重要な指摘は続く。彼は、「支那の経済組織は、1903年に現代的会社形態の組織が用いられるようになされるまで、外国から借り入れる能力がある事業単位を持たなかった。」支那の会社法の最近の形態は、1929年に国民政府によって発布された。しかし、「会社形態の成功は現在まで大ならず」と指摘している。(107)
企業組織の確立、中国経済の近代化がいつ始まったのか、その後どのように発展したのかについての、中国の実情もまたこの著作が説明してくれる。このような現実が、外国の直接投資を増大させていた背景でもある。
この著作については、私の著書Japanese Companies in East Asia: History and Prospects: Expanded and Revised Second EditionのChapter 1 Foreign Direct Investment in the Inter-war Period and Japanese Investment in Chinaで検討している。
また、東亜研究所の一連の研究も、リーマーの研究とともに、包括的な優れた研究である。東亜研究所編『諸外国の対支投資 : 第一調査委員会報告書』、東亜研究所編『日本の対支投資 : 第一調査委員会報告書』。機会を改めて紹介したい。
シー・エフ・リーマー著、東亞經濟調査局譯『列國の對支投資』
また、この著作の原文はHathiTrust Digital Libraryで全文ダウンロードして読むことができる。
Foreign investments in China / by C.F. Remer ...
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