2021年12月27日月曜日

強まるバブル懸念の指標とバブル研究の古典(1)

アメリカ株式市場では、バブルの懸念が強まっている。その現状と、バブル研究の古典について紹介した論文を、私のweb siteに掲載したが、その簡単な紹介を2回に分けて行いたい。

バブルの懸念が強まっていることを示す重要な指標のうち一つ目は、S&P 500 Cyclically Adjusted Price to Earnings Ratio(景気循環調整後の株価収益率(CAPEレシオ))だろう。2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー博士によって提案されたCAPEレシオは、株式の実際の株価収益率を反映している。計算式は、株価/ 10年間の平均インフレ調整後収益である。
2021年9月のその比率は38.34で、1980年からの変動は、図1の通りである。 青い線はS&P 500のCAPEレシオ、赤い線はS&P 500の株価である。S&P 500のCAPEレシオは、新型コロナ感染症の拡大で一時的に20台に下落したものの、その後は急速に回復し、2000年のバブル期の40に近づいている。

もうひとつの指標は、バフェット指数である。バフェット指数は、GDPに対する米国株式市場の総評価額の比率である。2021年12月16日の時点で、バフェット指数は、米国の総市場価値:50.2兆ドル、年間GDP:23.6兆ドルで、$ 50.2T÷$ 23.6T = 213%となる。この数値は、過去の平均を66%も上回り、最も高い水準にあり、市場の総評価額が異常に高いと言える。

これらの主張に対する重要な反論は、私の論文を参照してください。論文では、もうひとつの指標である恐怖と欲望指数も取り上げた。

2021年の年末まで、アメリカの株式市場は、コロナ禍の落ち込みから急速に回復し、上昇を続けてきた。論文1節で紹介した3つの指数から、それらの指数が、過去と比較して非常に高く、バブルではないかとの危惧が拡がっている。もちろん、バブル説には、本文に紹介したような有力な反論もある。

以上の検討は市場全体の傾向であるが、一方で、市場の一部では、最近のIPO、例えば電気自動車メーカーのリビアンなどが上場後高騰するなど、異常な熱狂と興奮状態がなお見られる。しかし、他方で、調整も始まっている。バブル期初期に人気を博したキャシー・ウッド氏率いる米アーク・インベストメント・マネジメント(ARK Investment Management)の商品の価格が停滞している。

市場がさらに熱狂し続けるのか、それとも一時的あるいは本格的な調整が始まるのかは、上記の指数によっても正確な予想は難しい。ただ、確実なことは、各国での大幅な金融緩和の縮小、急激なインフレーション対して金利の引き上げなどを迫られているため、株式市場は何らかの調整が避けがたいと言えるだろう。

次のブログでは、バブル研究の古典が、バブルと金融危機をどう捉えてきたかを紹介したい。

なお、私の論文は以下に掲載しています。「強まるバブル懸念の指標とバブル研究の古典」2021年の論文

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